
食糧危機の深刻化
2008/05/14
英エコノミスト誌は、2008年4月19日号の特集で世界に広がる食糧危機を取り上げた。
食糧危機は米国発の金融不安や原油高騰と比べても、看過できない問題だ。
というより、もっと深刻な問題だと言った方が正しいだろう。「信用不安によって投資家が損失を被った」「住宅価格の下落で消費が減速した」と言っても、クーデターによって政府が潰れたり、何万人もの人々が死傷するわけではない。原油の高騰もしかりである。
しかし、食糧危機は社会不安を起こす。食糧難と言うと、先進国や中東など一部の金持ち国ではインフレ問題の1つとして語られることが多い。そのため、先進国に住んでいる人々には、この問題の深刻さが正確に伝わらない。しかし、食糧危機は、後進国では餓死、反乱、クーデターを連想する言葉だ。つまり人々の生死に直結する問題である。
なぜ、その食糧難がここへきて深刻さを増したのか。理由はいくつかある。
第1が人口の増加だ。地球の資源が人口増に追いついていない。現在、世界の総人口は66億人を超えており、後進国ほど幾何級数的に増えている。この人口増の犠牲になっているのが農地面積だ。世界の農業収穫面積は1950年に比べて、半分以下に減った。人口が増えているのに、農地が減っているのだから、食糧不足になるのは当然である。
第2が人々の食生活の変化である。人口が13億人を超える中国では、肉を食べる中産階級が急増している。肉牛を育てるには、餌としての穀物が必要になる。100カロリーの牛肉を生産するためには、約700カロリーの穀物が必要と言われる。つまり人々の食生活が菜食から肉食に変化するほど食糧不足が進む。世界人口の5分の1を占める中国で食生活の変化が起きているのだから、その影響は大い。
第3が農業の“工業化”だ。農地面積の減少を補うには、農業の生産性を向上させる必要がある。そのため、農業は急速に工業化された。これはすなわち、農業が燃料を必要とする産業に転じたことを意味する。
トラクターや運搬車両には燃料が必要であり、肥料を作るのにも石油がいる。いつの間にか農業は石油無しにはやっていけない産業となった。そこを原油高が襲った。米国では標準的な肥料の値段が1年前には1トン当たり約450ドルだったが、現在はおよそ3倍の約1200ドルに高騰している。1バレルが110ドルを超えるような現在の石油の値段では、今の農業はもたない。
第4が地球温暖化である。世界的な天候不順が農業の生産性を低下させている。例えば、世界で2番目の穀物輸出国であるオーストラリアが、10年来の天候不順で急速に砂漠化している。
そして第5がバイオ燃料ブームだ。
欧米を中心にガソリンに代わる燃料として、サトウキビ、トウモロコシ、廃木材などから作るバイオ燃料が注目を浴びている。各国政府が、バイオ燃料の普及を促すために優遇税制を導入している。安全保障上の理由からエネルギーを自国で賄うというのが大義名分となっているが、私に言わせれば、この仕組みは詐欺に近い。結果として食糧危機を助長している。
サトウキビを原料とするブラジルの仕組みはまだ可能性があるが、大豆やトウモロコシを原料にする欧米の仕組みは生産性が低い。大豆の場合、バイオ燃料1ガロン当たりの生産コストが売り値を上回る。
それにバイオ燃料ブームは投機マネーを呼び込んでおり、食糧価格高騰の一因を作っている。米国ではブッシュ政権がバイオ燃料を推進しているが、政権が代われば、早急に見直されるだろう。
食糧難の影響は深刻である。世界には今、1日1ドル以下の食事代で生活している人が約10億人存在すると言われる。彼らは現在の食品価格が2割上がると、1日3食を2食に減らさざるを得ない。当然、食卓から肉や野菜は消える。1日50セントで生活する人だと、たちまち飢餓状態に陥る。
一方、どこの国にもこうした食糧難を商機と見て、米や小麦粉などを買い占める“悪徳商人”が存在する。米の最大の輸入国であるフィリピンでは、政府がこうした悪徳商人に重刑を課そうとしているが、庶民は「それでも生ぬるい。死刑だ」と叫んでいる。ハイチでは食糧価格の高騰に怒った住民が抗議デモを多発し、首相が辞任に追い込まれた。
既にインドやエジプトなど10カ国以上が食糧輸出禁止令や輸入食糧の無税化に動いている。アルゼンチンでは、食糧の輸出に税金を課したことが原因で、農民と政府の間で衝突が起きた。中国の事情通によれば、中国政府が今、北京オリンピック後に最も心配しているのは、経済の減速よりも、食糧不足による暴動が起きることだそうだ。
食糧問題については、様々な形で支援策が講じられようとしている。4月に米ワシントンで開催された7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)でも、この問題が論じられた。世界銀行と国際通貨基金(IMF)は食糧問題を緊急支援していく共同声明を出した。国際連合も、緊急支援のための資金の拠出を各国に求めている。
もともと世界の主要国は、十分な食糧在庫を持っていたが、過去20年間、食糧が豊富で安価な時代が続いたため、次第に在庫を減らしていった。油断していたところを見計らったように、食糧危機が襲ってきたのである。金融問題や原油高に目を奪われていると、その背後にある深刻な危機に気づかない。
特に資源の乏しい日本の場合、この問題にどう対処していくかは危急の課題のはずである。

外国人投資家の日本株買いが鮮明に(持たざるリスクを意識か)
2008/05/07
日本株の上昇に勢いがついてきた。
2日の東京株式市場で日経平均は終値で14000円を回復し7日(12:40現在)でも14000円台を維持している。終値では1月11日以来、約4ヶ月ぶりの水準まで戻した。株価の牽引役とみられているのが海外勢だ。金融市場の問題が最悪期を脱したとの見方が広がってきており買い戻しが活発化してきているほか、日本株を「持たざるリスク」も意識され始めているようだ。
東証が2日にまとめた4月の3市場投資主体別売買動向によると、外国人は、8204億円の買い越しとなり最大の買い主体となった。昨年11月から5ヶ月続いた大幅な売り越し基調に歯止めがかかったことになる。
海外勢による日本株買いの多くは、買戻しとみられている。サブプライムローン問題に端を発する信用収縮は世界景気の減速懸念からリスク資産を圧縮する動きが広がり、外国人は2007年8月から今年3月までに日本株を約4兆円売り越した。昨年夏場以降の世界の主要市場の中で、日本株のリターンはとりわけ低調だったため、多くの海外ファンドは日本株の組み入れ比率を引き下げてきた。
しかし、年初からの日本株のパーフォーマンスは必ずしも低調ではない。
米ダウの年初から5がsつ1日までの下落率1.8%に対し、日経平均は年初から2日終値までで、7.3%と表面上は下げ率が大きいものの、ドル建て日経平均(日経平均を円レートで除す)でみれば、約2.2%の下落となり、米国株と大きなパフォーマンスの差はない。「日本株のアンダーウエートを維持するとグローバルのベンチマークに勝てない。運用競走場の「持たざるリスク」が日本株買い戻しを誘発している。ファンダメンタルズを評価しているというより、買わざるを得なくなっているファンド勢が多いのではないか」との指摘が出ている。
ただ、「海外勢が日本株をアンダーウエートからニュウトラル方向にウエート調整しているのは事実だが、一段と買いあがるかは疑問」という声も強くある。「海外投資家のパニック的な心理は落ち着いたが、現時点で日本株を前向きに評価しているわけではない。ここから買い増しを期待するには国内から海外にアピールする材料が不可欠だ」と話し、手放しでの楽観的見方には懸念と否定的見解を示す声も強い。
投資家心理の落ち着きを示しているのが、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場の動きだ。
日本で指標となる、iTraxxJapanシリーズ9<ITXCK5JA=GF1>のプレミアムは2日午前、1日から10bpの急低下となる70bpちょうどで取引され、4月28日に付けた直近の最低値73bpを更新した。
過度な信用不安は後退しつつあるが、欧米金融機関の資本が大幅に毀損したことに加え、今後は、景気後退に伴うローンの損失等も懸念されている。金融市場の機能が正常化するには時間がかかるとの見方は少なくない。
「当面は買い戻し中心だろう。日本のクレジット市場はスプレッドが50bp程度が通常の状態。更に改善しない限り、リスク資産は流入しにくい」と指摘されてもいる。株式市場は最悪期を脱し、下値不安は低下したと判断できるものの「日本の企業業績に対する悲観的な見方が続くほか、米国の経済指標悪化によるドル安リスクがくすぶっており、今後2〜3ヶ月以内に再度、日本株買いのチャンス(株価の下落局面)が訪れる」とみるマーケット関係者も多い。
すなわち、日本株への本格投資の局面は、海外投資家も含めてまだ気迷い局面を脱していないといえるのではなかろうか。

「バレル150ドル時代」の悪夢
2008/05/03
ニューヨーク原油先物価格は2008年1月2日にはじめて1バレル100ドルに到達した。その後、3月12日にはバレル110ドルを突破しさらに120ドルも目前の状況にある。世界の原油価格の主導権を握るニューヨーク原油先物市場は、さらなる原油価格上昇期待の熱気に溢れている。
第二次石油ショック時の1980年に記録した1バレル40ドルは先進国における27年間の消費者物価上昇率を勘案すると1バレル104ドルに相当する。現在の1バレル110ドル台というのは実質価値で石油ショック時を上回り、石油専門家にとって未知の領域に入っている。
しかし、石油を巡る国際政治・経済環境は大きく変化しており従来の常識はもはや通用しない。
原油を巡る市場環境は2003年3月のイラク戦争開始を契機としている。
石油を消費する主要な担い手は石油ショック時の7億人から、中国、インドをはじめとする新興経済発展諸国を含めた30億人へと膨張した。先進国の国民は石油ショック時には既に豊かな生活を獲得しており原油価格高騰に対する省エネルギーが比較的容易であった。しかし、新たに加わった20億人余りの新興国の国民はこれから豊かになろうとしている。そうした生活向上意欲の強い国民に省エネを実行させることは難しい。
エネルギー消費の増加という観点から見るならば、中国、インドの鉄鋼需要と鉄鋼企業の発展は重要なポイントである。世界の粗鋼生産は第一次石油ショックのあった1973年には7億トンに達し、以後30年間にわたって変化はなかった。しかし、2002年から様相が一変した。年7000トンの割合で増加し始め07年には12億トンに達し、15年には粗鋼生産は16億トンに達する。このまま拡大していけば原油価格の大きな高騰要因となる。
では、原油価格の上昇に対して供給面はどうであろうか。
価格が上昇しているにもかかわらず生産量が増えないという異常な事態がある。
これは石油を埋蔵する国は一部の産油国に遍在し産油国がいくら膨大な超過利潤を獲得していても新規参入による価格破壊がないという特殊性によるものである。しかも産油国のほとんどはイスラム教国であり、アングロサクソン流の市場合理的には行動せず原油価格が上昇すると同じ生産量でも石油収入が増加することから、自国の資源を守ろうと、逆に増産のインセンティブを失う。いわゆる、自国資源の囲い込み、資源ナショナリズムの高揚である。
また、石油市場には欧米の経済社会では違法とされるカルテルが存在する。
ベネズエラのチャベス大統領、イランのアハマドネジャド大統領が就任してから、強烈なナショナリズムのもと目先の売り上げ増を我慢しても原油生産を絞るようになり、最先端の技術を持つ欧米石油メジャーを排斥して、OPECをを本当のカルテル組織に再構築した。OPECの目標価格は今世紀初頭の25ドルから100ドルに引き上げられたのである。
石油という商品はもともと価格が上昇しても需要が急激に減少しにくい財である。
石油が主として自動車やジェット機、船舶等の輸送用燃料として利用されているために、石油以外への代替がきかないからである。したがって、現在の原油価格の高騰に対応して、実際に需要が減少し、価格が下落するのにはさらに10年程度の時間がかかるであろうとのことである。
その理由に、重油などの重い油からガソリンやジェット燃料などの軽い油への需要構造の変化、すなわち白油化の進展がある。日本を例にとると、73年の石油消費の56%は重油であった。発電用燃料は石炭、天然ガス、原子力への代替が容易である。しかし、現在では重油が占める割合は22%しかない。その他は、石油以外への代替がきかないガソリン、ジェット燃料、軽油、石油化学製品の原料となるナフサである。そのために、簡単に石油以外のエネルギーに転換することは70年代の石油ショック時よりもはるかに難しくなっている。
米国経済のリセッションによる中国経済、インド経済のクラッシュを予想するむきもある。しかし、中国、インドは市場経済とはいうものの、強力な国家管理のもとでインフラ整備、自動車産業、鉄鋼産業の拡大をはかり、高度経済成長路線を続けている。
現在のまま新興国の膨張が続くならば、原油価格150ドル時代に直面する事態さえも覚悟する必要があるのではないだろうか。

外国ファンドの「日本買い」始まる
2008/05/02
米、英の金融当局はサブプライムローン危機を収束させるために、なりふり構わない政策を打ち出し始めた。つまり、かつて日本が最終兵器として投入したものの諸外国からtoo little,too late(少なすぎる、遅すぎる)と言われた公的資金の投入を早期かつ大規模に行っている。
米国では、JPモルガンがベア・スターンズを買収する資金をFRBが290億ドル(約3兆円)の特別融資という形で供給して、事実上公的資金による買い支えを行った。これに続きヨーロッパでは、イングランド銀行が金融機関が転売できずに抱えて流動性危機に陥っているサブプライムローン関連の金融商品と、英国債を交換するスキームを発表した。まずは10兆円規模を予定と発表しているが、必要に応じて増額も見込まれており、これも事実上の公的資金の投入である。
とはいえ、世界金融危機はまだ予断を許さず、日本の景気低迷はもはや避けられない。日本の2月の景気動向一致指数は50%を超えたが、鉱工業生産指数の基準改定に伴う数値のブレによるところが大きく、実態としては景気後退の目安となる「3ヶ月連続の50%以下」のリスクはまだ十分に残っているといっていいだろう。
日銀も景気判断を下方修正し、「必要なら利下げも検討すべき」と発言して委員がいたことを強調してメディアに流していることからじょじょに利下げの地ならしが始まったとみていいだろう。
金融危機と景気後退を何とか金融緩和で乗り切ろうとしている経済環境は、逆に見れば買収ファンドにとっては絶好のビジネスチャンスであり、水面下でかなりアクティブに活動しているようだ。
では日本の企業は投資先として本当に魅力的なのだろうか。
ある業界関係者は「1990年代後半の経済危機の時に不動産投資で大もうけしたGS,モルスタ、ローンスター、サーベラスといったプレーヤーは、今度は企業買収で同じシナリオを描いているようだ。当時、日本の不動産を買いあさるのは一般の日本人には理解不能だった」という。
事実、弊社にもこれらからそれに相当する求人が来ているという事実もある。
ある外資系投資銀行担当者によれば、「日本のPERが20倍を切っているということは、益利回りが5%以上。不動産投資は過当競争で、大規模案件では3%でも御の字の昨今を思えば、パラダイスだ。一方、金融機関のLBOローンの予算は既に年初に強気に立てられており、今後も調達金利は低め誘導と読んでいいだろう。調達金利と利回りにこれほど差があることはめずらしい。単純に金融商品としてみれば、たとえばヨーロッパの不動産、新興国株式と比べてもはるかに割安感がある。全世界的にも、強気を維持している数少ない領域だ」という。
具体的にはどの産業を狙っているのか。
ある投資銀行関係者は、「ここ2,3年、大手のファンドは大企業の部門買収や子会社の買収を狙って活動をしてきたが、結局あまり案件をまとめることができなかった。次に狙ったのがオーナー経営者の引退案件だが、経営に固執しがちな日本のオーナー経営者がわざわざ売る会社は、何らかの隠れた問題を抱えていることが多く、”スカ”をつかんでしまうことも多い。近いところでは三洋電機しかり、某アパレル会社しかり、某外食産業しかり、どれも大失敗案件になりそうな気配だ。そこで現在は、株主が分散していてTOBで買うことができる会社、経済のサイクル、特に円高で一時的に経営危機に陥りそうな業界の研究をしているようだ」という。
また、「無理な成長を維持するため中途半端な会社を高値で引き取ってくれるイオンやIT企業のような会社が総崩れになってしまったので、買収したあとの転売先イメージが変わってきている。現在イメージされているのは中国、インドの新興企業。彼らが欲しがりそうなブランド、顧客、技術を持っている渋めの中堅企業をターゲティングしているようだ」とのこと。
別の証券会社関係者は、「産業用機械、自動車部品、地方銀行、ノンバンク、食品、鉄、製薬会社といったところがわかりやすいターゲットだろう。実際、こうした業界の株は大きく下げると誰かが拾っているのか、下げ止まる。そうしたファンドがいずれ買いあさることを見越して、ゆっくりと買い進めているヘッジファンドもあるようだ」という。
とはいえ、マスコミ、世間の風評的には、「少子高齢化、政治の混乱による官製不況、円安バブルの崩壊、原料高、個人消費の低迷」と日本経済にはまったく明るい材料が見えてこない。投資ファンドの強気はどんなシナリオに基づいているのだろうか。ある外資系ファンドの関係者は「そう遠くない将来、転換点がくると思います。日本は基本的な技術や現場レベルの人材の質は高くてまだまだ世界で戦えると思います。日本の国内市場が伸びなくても、海外の新興市場の中でまだまだ成長余地はあると思います。ただ経営者、リーダー層のレベルが低いだけです。ローマの諺ではないですが、「ライオンの群れを羊が率いている」状態です。われわれ主導で経営層と戦略を変えれば、大化けする会社はいくらでもあると思います。かつてメーンバンク制度や霞が関が担っていた産業の構造転換を今回はわれわれが仕掛けるのです。」
実際、投資ファンドはメガバンクの常務や旧通産省の審議官といった人材を集め初めているし、こうした構想もまったくの妄想ではないことが見てとれる。彼らは証券市場は国民が不安の底にあるときこそ、獲物を虎視眈々と探している。
そして、彼らが実際に戦略を行動に移すタイミングが刻一刻と迫っているのである。

政策と経済と株価
2008/04/29
日経平均株価が昨日28日にザラ場で14000円台をつけたということで市場に安心感が出ているというが、笑止千万である。
’90年代に株価が低迷した時に、ダブル底で14200円をつけた時は経済見通しが最悪で、株式市場は総悲観論であった。その水準にさえ回復していない日経平均株価水準である。
今、225種平均PERは16倍弱、全銘柄平均PBRは1倍を切っている状況である。すなわち、株価、経済の定性的先行見通しがその程度に低いのである。PERは少なくとも20倍、PBRも1倍を上回っているのが常識的であることから考え株価の定性見通しを分析するなら今の株価の20%を上回った水準にはあるべきであろう。すなわち、日経平均株価は、17000円程度は維持していて不思議ではない。
その株価を14000程度までに引き下げてている主な要因は政府の政策、というよりも官僚の言いなりになっている与党の政策決定メカニズムにあると言える。明日にも予定されているガソリン税の暫定税率復活を盛った租税特別措置法改正案の衆院での再可決などは最近の物価上昇に輪をかけるほどの暴挙とも言えるものである。2兆6000億円の増税に等しいものである。消費意欲を低下させ、経済への悪影響を生じさせ、株式市場に投資資金がまわってこない要因になる。
政策ミスによる経済への悪影響ははなはだしいものがある。枚挙にいとまない。
昨年12月4日付けでのこのブログで警鐘を鳴らしているが、その内容を再度下記のとおりご紹介するので良くお読みいただきたい。
<2007年12月4日付けブログ>
「特定商取引法」「改正貸金業法」「金融商品取引法」「改正独占禁止法」「改正建築基準法」と、このところの法改正にはすさまじいものがある。来年1月には「割賦販売法」「特定商取引法」の改正案の国会提出も予定されている。「こうした矢継ぎ早の法改正は経済成長にとって大きな足かせ要因で、まさに行政不況の様相を呈している」(大手証券アナリスト)。サブプライム問題、円高、原油高等日本経済を取り巻く環境が厳しさを増す中、「このままでは景気は真っ逆さま」(大手シンクタンク)との悲観論も浮上している。
前年9月比の新設住宅着工戸数は44%減とこの37年間で最悪の数値を示した。
特定商取引法を契機とした英会話学校やエステチックサロン、貴金属、呉服などのユーザーに対する信販・クレジットの絞込みは想像以上のものがあり、関連業者は瀬戸際に立たされている。
9月末に施行された金融商品取引法ではファンド規制による不動産業界へのダメージが気にかかる。
消費者金融業界のみならず信販、クレジットカードという個人向けローン市場に壊滅的な大淘汰を迫っている改正貸金業法。
もちろん、こうした法改正は消費者保護や透明性の確保、業界の新たな枠組みの構築、そして反社会的勢力の排除のためには当然の流れである。
とはいえ、法改正に伴う明確なセーフティネットや新たな需要創造策が提示されないまま、荒治療が断行されれば結局は個人、中小零細企業、地方にしわ寄せが及ぶことになる。
しかも、法改正は、なんと反社会的勢力の増殖という本末転倒の事態まで招いてきている。
いずれにしても、消費者保護、反社会的勢力の排除を錦の御旗とした一連の法改正によって、霞ヶ関が産業界の生殺与奪を握ったことは確かである。「裁量行政」から「ルール行政」へ転換すれば、監督不行き届きを責められる危険性は減じる。金融庁、経済産業省には「新たな利権(天下り等)」の確立という隠れた至上命題もちらつく。「法改正」はその有効な仕掛けとなる。
いずれにしても、このような状況が放置されるならば、来年、日本経済は予測も出来ないような暗い闇に突入する強い懸念がある。

SWFが世界を支配する?
2008/04/17
毎年1月に開催される世界経済フォーラム、通称「ダボス会議」で、今年の経済関連セッションで採りあげられたものは、「SWFの神話と現実」というタイトルであった。
昨年夏に発覚したサブプライム危機は、シティグループやメリル、UBS等の欧米大手金融機関へ資本注入した中東産油国やシンガポール、中国等々のSWF(いわゆる、政府系ファンド)によって世界が大恐慌の奈落に落ちるところから救われたと言って良い。
昨年5月モルガンスタンレーが発表したレポートでは、SWFの運用資産総額は2006年末で2兆5000億ドルに達し、ヘッジファンドとプライベート・エクイティ・ファンドの合計額を超えたと推計している。その後も増加している。今や、SWFという妖怪がグローバル資本主義の世界を大手を振って徘徊し始めたのである。この妖怪は世界経済、ひいては日本にとってどのような影響を与えていくのか。
SWFには、中東諸国のように石油や天然ガス等の売却益による外貨建資産、また、アジアの等の貿易黒字拡大による為替レート高騰を防ぐため、為替介入によって蓄積された外貨とに分けれる。「資源型」と「非資源型」である。世界のSWF資産総額のおよそ三分の二が中東を中心とした、例えば、KIA、ADIA等のような資源型SWFである。ただし、テクマセ、GIC等のような非資源型SWFは伸び率が高く、2015年には資源型に肩を並べるとの推測である。
日本では、自国の天然資源を輸出して得た外貨を別会計にしてバランスシートから除外することは、制度上ほとんど不可能である。しかし中東やアジア諸国では可能なのである。したがって、SWFの運用の実際については、いわゆる国のポートフォリオには計上されない。
ファンドの投資は、例えば、KIAが独ダイムラー社といった優良株を長年持ち続けているように「マイノリティ投資」が基本である。ただ、近年は企業の大株主となる「マジョリティ投資」を世界的に積極的に展開しているのが目につくように変化している。
投資手法の一つとして、こんな動きもある。今年2月、アメリカの投資会社JCFが新たに設立するファンドにCIC(中国系SWF)が最高で40億ドルを出資することとした。JCFは業績不振の金融機関への投資で名を馳せ、日本でも昨年から新生銀行の筆頭株主となっている。つまり、CICはJCFが設立するファンドに出資することで、日本を含む外国の金融機関への間接的なつくりつつある。
高いリターンを期待して資産運用に取り組まねばならない事情はそれぞれにある。
中東産油国は、今世紀に入ってからの原油価格高騰で過去最大の利益を享受しているが、原油価格が1バレル100ドル近くの高値で安定する可能性は、これまでの価格推移や実需の伸び悩みからみても、あまりない。それに中東産油国は資源売却益がGDPのかなりの部分を占めており、原油価格の変動が国の財政を揺るがしかねない状況にある。その「備え」のために、輸出収入を運用し、余剰を作らねばならない。そのためのSWFという位置づけなのだ。その一方で、オイルマネーで潤ったことあり、基本的に少なかった中東産油国の人口が爆発的に増えていることもSWFの活動と関わりがある。人口が増えれば、本来ならば内需や生産力が上がり、経済成長がもたらされる。しかし、産油国はその天然資源のみで経済が保たれていて、新たな産業を育成しにくい風土にある。その場合、人口増は1人あたりの取り分の減少につながる。その取り分減少を補うためにも積極的な資産運用が望まれているのだ。
一方、中国をはじめとしたアジアの国々にも特有の理由がある。
そのキーワードは「高齢化」である。ノルウエーのSWFが政府年金ファンド(GPFN)であり、高齢化に備えて堅実な運用を行っているが、日本を含めてアジア諸国の人口の高齢化はそれに輪をかけて深刻だ。年金制度の重要性が増していくばかりである。中国の年金制度は現状でも既に深刻な状態にある。都市部では強制加入のはずの基本養老保険の加入者が総人口の15%にすぎない。CICの総経理である高西慶しの前職は中国の全国社会保険基金の副理事長である。このことからもCICの主たる目的の一つが十分に伺える。
それからもうひとつ、SWFを運用する国々の共通している目標があると思える。
中国、UAE,シンガポール・・・・これらの国々はみな、自国通貨を基軸通貨に近い状態にまで押し上げ、自国にその地域における国際金融センターをつくることを狙っている。天然資源はいつかは枯渇するし、アジアの成長を支えた人口も高齢化していく。ため込んだ資金を放蕩していくのではなく、仮に資源がなくなり、あるいは超高齢化社会が到来したとしても富を享受しつづけるためには、自国をグローバルな資本の流れのハブにすることで、自国の通貨自体の購買力を高めていくことが望まれる。
現在、中東ではドバイが、そしてアジアではシンガポールが、それぞれ国際金融センターの地位を獲得しようとしている。ライバルはそれぞれ、カタール、そして香港と上海である。そうした国のSWFが外国の証券取引所や大手金融機関の株式に熱心なのは、純投資をいうよりは、国際金融センターとしての地位を確立するための戦略的投資だと考えているからである。
決して、巨大な金額を投資したことによって、そのSWFの属する国の政府の政治力拡大に利用したり、投資先の国や企業の判断を歪めたりするようなことを目的にしているわけではない。
翻って、日本としてもこのような世界的なグローバル資本主義ともいえる真っ只中で、どう対処していくべきなのかを良く考えていく必要に迫られているのは疑いのないものである。

米大手金融機関の第1四半期決算(発表予定)
2008/04/16
米大手金融機関の2008年1〜3月期(第1四半期)の決算発表が本日16日のJPモルガン・チェースから始まり、17日がメリルリンチ証券、18日のシティグループと続く予定でマーケットの当面の最大関心事となっている。
アナリスト筋では、米大手金融機関のなかで業績が不安視されているのは、メリルとシティとのこと。
ドイツ銀行の金融アナリストはメリルの第1四半期の1株当たりの損失予想を、1.20ドルから1.38ドルに、またゴールドマンもシティの同損失を1ドルから1.55ドルへと上積み修正している。
この下方修正の理由はクレジット関連の評価損からとのこと。
ここに来て、LBOローンなど評価損の対象になる金融商品は広がっており、ABSCDO関連の損失が再び拡大しそうとの指摘が根強い。ABSCDOは、サブプライムローンをもとに組成したABSをさらに束ねた金融商品である。さらに損失の拡がりが懸念されるのは、関連指数が下げ止まらないからとのこと。市場の予想を総合すると第1四半期のABSCDO関連での評価損は、シティが120億ドル、メリルが20億ドル前後に達する可能性があるとのこと。
他の収益源も深刻のようである。
トムソン・ファイナンシャルによれば、1〜3月の株式関連商品の全世界マーケットでの発行額は1000億ドル強と5年ぶりの低水準で、計60件の新規株式公開が延期・中止された。
一部大手証券では、「我々の収益の6割は米国外からのものである」とのことを言っているようだが、新興国などからの収益の多さを訴え、市場の信認を得たいようだ。ただ、米国の市場動揺は、米国外の資本市場を舞台にした活動も冷やしている。
「グローバル化」は難局を乗り切る解にならないかもしれない。
いずれにしても、今日から今週末にかけての米大手金融機関の決算発表が世界のマーケットに与える影響を注視したい。

チベット騒乱の背後に地下資源問題
2008/04/14
3月14日に中国チベット自治区の首都ラサで大規模暴動が起き、中国政府は北京オリンピックを控え、聖火リレーへの反対行動が行く先々で起こり、その鎮圧・沈静化に必死である。
中国人民解放軍が最初にラサに進駐してラサを併合したのは1950年、半世紀が過ぎた。その間、戒厳令が発令された大規模な暴動としては、ダライ・ラマを追放した1959年3月と1989年3月であった。どういうわけか今回も3月、これまでのチベットの犠牲者は100万人を超えるといわれている。1989年の動乱の映像がYOUTUBEで放映されているがその弾圧の過酷さがよく見てとれるらしい。今回も似たようなものと容易に想像できる。
中国は何故そのような強硬手段でチベットを統治しようとするのか。
それはチベットに眠っている豊富な地下資源だといわれる。その眠りを覚ます役割が2006年7月に開通した青蔵鉄道である。青海ーラサ間1145キロメートル、約3200億円かけて建設された鉄道は採掘された資源の輸送手段となるわけである。
国あるいは地域を実行支配する常套手段が鉄道建設である。自国民を大挙して送り込み資源を収奪する方法はかつて日本も満州で満州鉄道建設等で資源確保を目指す等で行った。
チベット自治区とその周辺のチベット族居住地域の地下資源は資源飢餓国の中国としては絶対に開発したいところである。青蔵鉄道建設に先立ちその沿線地域において政府地質調査団が広範囲にわたり探鉱した結果、銅、鉛、亜鉛、鉄鉱石の鉱床が発見されたという。これら資源の価値は1250憶ドルと評価されている。銅が2000万トン、鉛・亜鉛が1000万トンで1カ所の銅鉱床で確認された埋蔵量789万トンは中国全土で2番目の規模である。これら調査結果を2007年1月新華社通信が公表した。
多くのチベット人にとってはそれまで青蔵鉄道の建設が資源収奪を目的とするものだと疑念を抱いていたが、そのことが確認されたいうわけである。チベット高原における行為はチベット人には何らの自由も優先権もなく、中国の資源収奪は占領されたチベットにおける「白昼堂々の盗み」とまで表現するチベット人もいるほどである。鉄道に反対してきたのは、資源収奪もさることながら漢民族がどんどん増えることによってチベット人が駆逐されることを恐れたからである。
ちなみに、ラサの人口35万人のうちすでに20万人が漢民族に達している。
今回のラサでのチベット人の暴動の原因を探ると根が深いものだと分かるが、一番はやはり中国政府の世界資源獲得の政策に起因しているように思える。
今後の中国のさらなる経済発展と世界での政治的・経済的な地位の確保には、世界から信頼されるべく施策をオープンに実施すべきと確信する。北京オリンピックとの関連で、チベット問題でどのような軟着陸ができるかが今後の世界経済にも深く関連すると思える。
今後のこの問題には目が離せない。

基軸通貨ドルの「地位」は揺るがない
2008/04/07
ドル急落でドルの威信が揺らぎつつあると危惧する専門家が増えてきているがどうだろうか。
変動相場制に移行した1973年から現在までを均すとドルは円に対して名目で年率3%くらいずつ下落しており、ドル安は今後も徐々に進むだろう。ただし今回のドル安はグローバルな不均衡の調整という意味合いが強い。これと基軸通貨としてのドルの没落とは別問題である。ドルが基軸通貨の地位を失うことは今後の20〜30年は考えられない。何故なら、ドルは対外債務が増えて為替相場が下落しても信用危機を起こさない唯一の通貨といえるからである。
米国に入るマネーの9割はドル建てだが対外資産におけるドル建て比率は実は半分である。残りはユーロや円などの外貨建てであるため、ドルが全般的に下落すると膨大な為替益が米国にもたらされるので。しかも、ドルの下落は米国の経常赤字を縮小させるというメリットもあり、すでに米国の経常赤字はドル安に伴って縮小局面に入っている。2006年に対GDP比で6.1%にまで上昇した赤字は07年には5.3%に減少している。足元で続くドルの下落がこれからも続くと、今年の赤字はGDP比4%台後半に、また2010年ごろには3%台程度に減る見通しである。
さらに米国は対外債務コストが債権のリターンより割安という体質を持っている。06年の米国では債務が債権より2.5兆ドル多いのだが、13.8兆ドルの対外債権から得るリターンが16.3兆ドルの債務が生むコストよりも大きい。米国の対外投資は1970年代から活発化したのに対して、日本や欧州の対米投資が本格化したのは80年代以降と新しい。通常、投資が黒字化するには時間がかかるため、履歴が古い分だけ相対的に米国のほうが高いリターンを得られる。だから経常赤字にもかかわらず、債務と債権の差が縮まり、収支がプラスになるという減少が起きるのである。
こういう米国の姿は基軸通貨を武器に他国から搾取を続ける「金融帝国」とも表現できる。しかし日本及び他国が米国への投資を政治的・軍事的に強要されているわけではない。また、米国市場は世界最大の規模を持ちながら、資金の出入りが自由で企業の情報開示が進んでおり法制も整備されている。肥大化するマネーの投資先としての好条件がそろっているから米国への投資は衰えない。
日本は昨年夏以降対米投資をためらっているが、世界的に見れば、対米投資は昨年秋から増加基調にある。
国際通貨基金の調査によると、外貨準備高に占めるユーロの割合は現在25%程度。これに対してドルは60数%である。流通の実態を見てもユーロはまだEU内の地域通貨の性格が強い。今後、決済通貨としてのユーロの使用が増えていくは間違いないだろうが、ドルにとって代わるという異変は、あるとしてもはるか先のことであろう。

日銀短観発表
2008/04/02
日銀が1日、3月の短観を発表した。
それによると、原油高、株安、円高などで足元の収益環境の悪化により景況観が急速に悪化していることが明らかになった。
大企業製造業の業況判断指数は前回短観の昨年12月調査より8ポイント低いプラス11となり、4年3か月ぶりの低水準となった。企業規模や業種にかかわらず景況観の悪化が鮮明になっている点が懸念される。
原油など輸入原材料が値上がりしているのに、販売価格に転嫁できないことが特に製造業の加工業種に響いている。企業は値上げの姿勢だが、コストの上昇分を補えておらず収益圧迫は続いている状況だ。その収益悪化のため、設備投資にも慎重になりはじめており、前年度比1.6%減となっている。
民間エコノミストの一部には既に景気が後退局面に入ったとの見方も出てきている。
日銀は景気は拡大基調との見方は崩してはいないが、08年度の成長率見通しを現行の2.1%から1%台に下方修正する見込みとのこと。
金融政策についての市場の見方の一部には、早ければ4月中に利下げに踏み切るとの見通しもあるが
日銀総裁不在からこれも半信半疑の状況である。
多くの企業が年度後半には収益が持ち直すとの計画とかの楽観的な側面も見られるが、次回の6月調査の短観でどのような修正が出てくるかが気にかかる。



















