ユダヤ資本に翻弄される原油価格ー「バレル200ドル」の悪夢は近い
2008/07/04
ニューヨークの原油先物市場におけるWTI原油価格は7月3日、1バレル145ドルをつけた。
特に5月に入ってからの上昇は異常だ。5月5日に1バレル120ドルを突破してからわずか2週間後の5月21日には130ドル、6月6日には139ドルと1ヶ月で1バレル20ドルも上昇した。これほどの短期間での上昇は過去に例がない。しかし5月に入ってから世界の石油需要が特別に急増し、石油需給が逼迫したわけではない。逆に米国ではガソリン価格が史上初めて1ガロン4ドルを超えて米国内のガソリン需要はドライブシーズンの到来にもかかわらず、日量1000万バレルを大きく割り込んでいる。
つまり、WTI原油価格の決め手となる米国の石油需要は逆に緩和している。
なぜ、5月から6月にかけて原油価格はこれほど高騰したのか。その本当の理由は、米国投資銀行、有名投資家の相次ぐ原油価格上昇予測リポート、世界で一番権威があるとされる国際エネルギー機関(IEA)の実際の世界石油需要と乖離した強気の予測にある。
5月6日に米国最有力投資銀行のゴールドマン・サックスが原油価格は今後、半年から2年以内に1バレル150ドルから200ドルに上昇するというリポートを発表した。5月20日には有名な投資家ブーン・ケビンズ氏(小糸製作所への敵対的TOBで一躍日本でも名を挙げた人物)が経済専門テレビで、原油価格は年内に150ドルに上昇するとコメントした。さらには米国第3位の投資銀行モルガン・スタンレーが6月5日に原油価格は7月には150ドルに上昇するというリポートを公表した。こうした原油価格上昇予測の節目節目で投資家は原油投資は儲かるものと、ニューヨーク原油先物市場に殺到した。
投資銀行や有名投資家のリポートの内容は素人の分析であり、石油専門家からみれば乱暴なものだ。
産油国の石油供給はピークに達しており、中国をはじめとした新興経済発展諸国の石油需要の伸びに供給が追いつかず、原油価格は1バレル150ドル以上に高騰するという。
しかし、世界の原油生産が10年にピークを迎え、その後石油需給逼迫から原油価格は天文学的に高騰するという、いわゆるオイルピーク論は多くの石油専門家によって否定されている。東シベリア、サハリン、カスピ海、西アフリカをはじめとして、まだまだ開発されていない油田は無数にある。
それに加えて、原油価格高騰に拍車をかけている犯人は、IEAが毎月公表する石油市場月報の世界石油需要見通しだ。IEAが毎月公表する石油需給に関する報告は世界でもっとも信頼できる統計として
、米国、日本、欧州の主要メディアが大きく取り上げる。
原油価格予測を行う投資銀行の著名アナリストもIEA統計をもとに投資家向けのリポートを書く。IEAは主要石油消費国が中心となって1974年に設立された国際機関であり、エネルギーに関するもっとも権威ある組織である。特に中東産油国が最高の国家機密として自国の原油生産量を公表しない現状において、毎月月初に発表される石油市場月報は、世界の原油生産量、石油在庫量、石油需要見通しに関する唯一のデータとして世界中のアナリストが注目している。
その「権威ある?」IEAの月報が石油市場の需給状況を誇張しているのだ。
特に、元金融アナリスト出身のローレンス・イーグル氏が石油市場月報の責任者となってから、世界の石油需給に関して強気の見通しを発表し、その後に下方修正を繰り返す傾向が強くなった。
2008年に入ってからも、世界の石油需給見通しを4回も下方修正し、今年の石油需要増加を最初の日量200万バレルから80万バレルへ大幅に引き下げた。原油価格の今後を占う先進国の石油水準も需給逼迫を印象付けるように最初は少なめに発表し、その後に上方修正を行っている。
強気の石油需要見通し、少なめの石油在庫水準を発表するたびに投資銀行のアナリストは原油価格上昇予測を行い、投資家を煽る図式が定着している。
イーグル氏の予測は、商品ファンドやヘッジファンドを通じて原油先物取引を行っている投資銀行にとって都合が良い。そうした功績もあって、イーグル氏はJPモルガン・チェースのファンド・マネージャーに華麗な転職を遂げた。
こうした投資銀行主導の原油価格高騰に対して、経済産業省の北畑隆生事務次官は、「怒りを感じる。ウオールストリート資本主義の悪い面だ」とゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーを具体的に名指しで批判するという公的立場では異例の発言を行った。甘利明経済産業大臣も石油需給でみた原油価格は70ドルであり、それを超えた部分は投機であると言明している。
だが、投機の動きをもはや止めることは出来ない。
21世紀に入って原油市場は根本的に変質した。歴史を振り返ると、原油価格には常に支配者がいた。
1960年代まではメジャー(国際石油資本)が、70年代は石油輸出国機構(OPEC)が原油価格を決めていた。しかし、83年にニューヨークに原油先物市場が創設され、2003年のイラク戦争以降に金融資本が原油先物市場の主要なプレーヤーとなってからは、原油価格の支配権はユダヤ系の投資銀行に握られた。
ニューヨークの原油先物市場の取引高は、2000年には1日1億バレル程度しかなかった。しかし、現在は16億バレルにまで膨張している。しかも、市場取引高の9割は金融機関と投資銀行傘下の商品ファンドであり、商品ファンドのほとんどはゴールドマン・サックス、ソロモン・ブラザーズ、リーマン・ブラザーズの傘下だ。
つまり、ニューヨーク原油市場は、もはや石油を実際に利用する実需家ではなく、石油そのものにまったく興味のない、価格の変動による利ざや狙いだけのユダヤ系投資銀行に支配されているものだ。
もちろん投資銀行の動きを苦々しく思い、投機資金の動きを規正しようという動きもある。
しかし、米国のポールソン財務長官は、「現在の原油価格高騰は、投機によるものではなく、石油需給逼迫が原因だ」と公言してはばからない。ポールソン氏もゴールドマン・サックスの出身である。
ユダヤ系投資銀行主導による原油価格高騰に対して、イスラム教国である中東産油国は内心穏やかではない。しかし、中東産油の価格はWTI原油価格に連動し、買い手の少ないサウジアラビアの重質原油も130ドル以上で売れ、国家の収入は増える。しかも、原油価格高騰の責任は投資銀行に押し付けられる。居心地は悪くない。
このまま投資銀行の強気の予測リポート公表と原油先物市場支配が続く限り、原油200ドルの悪夢到来は近い。


















