
米経済、年後半に2番底へ
2008/08/04
昨年来の厳しい情勢下で、予想以上の強さを見せてきた米国経済。
しかし今、年後半に景気が2番底に突入する可能性が高まっている。
実体経済の悪化はまだ始まったばかり、との声も上がる。
サンフランシスコ連邦銀行のジャネット・イエレン総裁に言わせると、ほぼ1年前に米国経済を脅かし始めた要因は「嵐が吹き荒れ、雷が鳴り響く中で3人の魔女が災いを起こす『マクベス』の幕開けと似ている」。曰く、「違うのは、今のトラブルメーカーが魔女ではなく、住宅市場と金融市場、商品市場の3つだという点だ」。
そのトラブルメーカーはなお健在だ。金融市場の混乱は続き、米経済は再び重大な局面を迎えた。足元の四半期は堅調な伸びが見込まれるものの、米経済は著しい低成長か景気後退に陥る危険性が高まっている。原油高騰の煽りで、金融業界の弱さと経済の弱さが互いに増幅し合う、信用収縮の典型的な様相を見せ始めているからだ。
一方、米経済がインフレに突き進むリスクも高まっている。エネルギー価格の急騰はCPIの上昇率を前年比5%まで押し上げ、いくつかの指標は将来のインフレ期待の高まりを示唆している。
米当局による直近の大型介入──米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の救済策──によって、政府系住宅公社2社は資金調達の手段を確保。住宅業界にも引き続き資金フローが見込める道筋がついた。
だが市場では、3月のベアー・スターンズ救済後のような株高は見られない。逆に救済策発表から数日間、金融株は下げ続け、週後半になってようやく反発。米国の株式市場と経済の方向性のなさを浮き彫りにした。
おかげで今、エコノミストと投資家は米国が信用危機のどの段階にあるのか頭を悩ませている。野球で言えば、もう8回なのか、まだ4回なのか、ということだ。当初はベアー救済が信用危機の転換点になると思われたが、今やそれが決定的な転換点ではなかったことは明白だ。となれば、ファニーとフレディの救済が究極の転換点となると考える理由もない。
ファニーとフレディの債務は以前から、政府に保証されていると見なされていた。このため両社救済は金融市場と経済が奈落の底に落ちるシナリオは排除できても、その他の金融機関の展望を改善させるものではない。両社がデフォルトする危険性は確かに脅威ではあるが、それも金融市場と経済にのしかかる重圧の一要素にすぎない。
年明けに危ういスタートを切った米経済は、春から初夏にかけて目覚ましい反発力を示した。単月ではGDP成長率がマイナスに転じる月もあったが、上半期全体では予想を上回る伸びを達成した。経済活動を支えたのは輸出。だが、個人消費もFRBを含む大方の予想よりかなり健闘した。
FRBは6月の会合で、上半期実績に基づき、今年の経済成長予想の“中心的傾向”を上方修正した。現時点で、今年の経済成長(第4四半期の前年同期比成長率)は1.0〜1.6%になると見られている。今年4月時点の予想は0.3〜1.2%だった。
一方で、経済が年後半に再び悪化する危険性が高まっている。その原因は、昨年の危機当初から米経済を脅かしてきた3人の“魔女”だ。一時は明るい兆しが見える場面もあったが、過去2カ月、この3つの負の作用が勢いを増している。結果、次第に多くのエコノミストが“W字形”の景気低迷を予想し、年末にかけて完全な景気後退入りを予想する人も出てきた。
エコノミストが最終的に、年初の景気をどの程度の弱さと判断するかにもよるが、年末は米国がついに景気後退に陥るか、再び景気後退を迎えることになりそうだ。米モルガン・スタンレーのエコノミスト、リチャード・バーナー氏は「米国が2番底の景気後退に陥る確率は50%以上ある」と指摘。「消費者は苦しんでおり、逆風は最近になって強まったばかりだ」と話す。
成長を脅かす最大の要因は、信用危機の作用が復活したこと。金融業界の打撃が実体経済に及び、それが再び金融業界を襲う負の連鎖である。7月半ば、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)500金融株指数は昨年5月の高値から37%も下落。その後持ち直したが、まだベアー危機後の3月につけた安値を15%近く下回っている。
驚くべきことに、銀行はまだ証券化商品に絡む損失の総額を把握できていない。景気減速を受けて様々な融資で返済延滞が増える中、銀行は再び巨額の評価損を計上している。
こうした損失自体は珍しくもなく、以前からある信用サイクルの一環だ。問題は銀行が前回の巨額損失によって資本を傷めた状態でこの局面を迎えたということだ。同時に、金融機関は市場の振れや確かな取引相手を求めるニーズに対応し、レバレッジを減らそうとしている。
JPモルガン・チェースのストラテジスト、ジャン・ロイス氏は言う。「個々の銀行やファンド、証券会社はレバレッジ解消に躍起だが、金融システム全体のレバレッジ解消は難しい」。
今、多くのアナリストが銀行の相次ぐ破綻を懸念している。だが、破綻がなくても、高くつく資金調達を嫌がる銀行が今後さらに融資を縮小し、経済の信用収縮を悪化させる恐れがある。FRBのベン・バーナンキ議長は先の議会証言で、「銀行がレバレッジを解消したり規模を縮小したりして、商機を生かすために必要な資金の調達に二の足を踏むケースが多い」と述べた。
金融業界の難局は、経済見通し、特に住宅市場の展望の不透明さと密接に絡んでいる。住宅価格はその資産効果及び借り入れ手段としての価値を通じて消費支出に多大な影響を与える。また、住宅ローンのデフォルトや住宅ローン担保証券の価値に及ぼす効果を通じて金融機関にも影響する。
S&Pケース・シラー住宅価格指数によれば、米主要10都市の住宅価格はピークから19%下落。先物指標は相場が大底を打つ前に30%は下落することを示している。大都市圏を対象とする同指数は全米の相場下落と懸け離れていると見られるが、FRBの6月の会合議事録にあるように、住宅市場の見通しはなお「暗い」。
住宅指標には一部改善も見られるが、賃貸料と比べた価格は依然高い。売れない住宅在庫は積み上がり、住宅価格の下落傾向は弱まる兆しもない。住宅価格は上昇局面で適正価格を大きく上回ったように、下落局面でそれを大きく割り込む恐れがある。
今年第1四半期には50万件以上の住宅ローンが住宅差し押さえの手続きに入り、一部地域では“差し押さえスパイラル”も見られる。住宅価格の下落が差し押さえを増やし、それが住宅価格の一段の下落を招く事態だ。「住宅の資産価値のデフレは金融システムのバランスシート安定化を困難にし、実体経済への逆風を強める」と債券運用大手米ピムコの共同経営者モハメド・エル・イーリアン氏は言う。
信用収縮に加えて経済にのしかかる重圧が石油高騰だ。これは米経済を景気後退に陥れる決定的な要因となるかもしれない。多くの経済分析は石油価格がインフレに与える影響に焦点を当てるが、ガソリン高騰は米国の消費者に多額の税金を課す。そのうえ年初以降、急激なエネルギー・食品高騰が名目賃金の上昇を帳消しにし、労働者の実質賃金はゼロ成長となっている。
こうした中、驚くべきは米経済がこれほどの力強さを維持してきたことだろう。第1四半期のGDP成長率は1.0%に上方修正され、第2四半期は長期トレンドに見劣りしない2.0〜2.5%に落ち着くと見られている。
第1四半期の成長の大部分は純輸出によるものだが、5月以降の1100億ドル規模の所得税還付の効果もあり、個人消費も健闘した。税還付は消費の伸び率を2%程度押し上げた模様だ。だが、この消費刺激効果は一時的なもので、下半期に入ると薄れていく。
もう1つ、消費がこれまで健闘したが年後半に陰ると考えられる理由がある。金融市場の信用危機と実体経済の信用収縮のピークに予想以上の時間差があるかもしれないのだ。昨夏の危機当初、銀行は既にかなりの額の与信枠を企業と個人に与えていた。今年に入り、貸し手は新規の与信設定を削減し、過去の与信枠を減らそうとしている。だが、既存の与信枠を取り消すのは難しく、多くの借り手は承認済みの与信枠を使いカネを借りられた。
また、危機が起きた当初、企業は大量のキャッシュを稼いでおり、それが与信削減のバッファーになった。だが、それも景気減速で傷んできている。元財務長官で、ハーバード大学教授のローレンス・サマーズ氏は、実体経済の信用収縮の影響がピークに達するのはまだ先だと指摘する。
一方、米国は深刻なインフレリスクにも見舞われている。6月に5%に達したCPI上昇率は恐らくまだ上がる。今のインフレは外部要因によるもので、国際市場で取引されるエネルギーと食品の高騰が原因だが、これも長引くとインフレが国内物価に織り込まれるリスクが高まる。実際、6月は食品とエネルギーを除くインフレのコア指数がじわり上昇した。
今年上半期に予想を上回る強さを見せた米経済が下半期も勢いを維持する可能性は十分ある。だとすれば、経済成長はすぐに通常かそれ以上の水準に戻る。超低金利と予想されている住宅着工の安定化が成長を煽るからだ。だが、そうなると、今多少だぶついている経済の余剰(失業率はまだ5.5%)が解消され、足元の高インフレが国内の賃金及び価格決定に織り込まれるリスクが一気に高まる。
仮に経済成長が予想を上回らなくても、経済の弱さをよそにインフレ期待が高まるリスクは残る。その結果、労働者は1970年代のように、予想実質賃金の据え置き、または微増を容認する代わりに、物価高騰に対する全額補助を要求するかもしれない。
FRBが計算を誤れば、米国は深刻なインフレ問題を抱え込む。だが、もしインフレリスクに適切な対応を取れば、成長リスクを増幅する恐れがある。原油価格が突如落ち着いたり、経済が急減速したりしない限り、FRBにできることは、再び利上げに転じる日を先送りするだけという状況になる。
また、インフレ期待が一段と強まるようなら、FRBは経済成長に与える打撃を押して利上げせざるを得なくなる。そうなると、インフレリスクを悪化させずに成長リスクを抑えるうえで当局に打てる手はなくなる。
政策立案者はこれまで金融危機の影響を抑え、米経済の終末シナリオを封じてこられたが、問題の根幹にある作用は止められなかった。インフレを勘案すると、金融政策は限界に達しており、今後の政策対応は財政当局、つまり米政府に頼らざるを得ない。
ヘンリー・ポールソン財務長官は、必要とあらば政府はシステム全体の安定確保に介入すべきだが、個別の金融機関や企業、一般家計は自力で問題を解決すべきだとの見解を取っている。
その見方は正しいのかもしれない。7月半ばの金融株の反発は、一定の水準になればリスクを取る投資家が現れることを示している。住宅価格もいずれ、買い手が戻って供給に追いつく均衡点を迎える。その段階では信用危機は終わっている。また、原油価格が落ち着けば、成長リスクとインフレリスクのバランスを取ることはさほど難しくなくなる。7月半ばの原油相場急落は、原油が経済に与える重圧が緩和しつつある可能性を示唆している。
しかし、ピムコのエル・イーリアン氏は、住宅価格と金融セクター、経済には「複数の不安定な均衡点」があり得ると指摘する。言い換えると、住宅価格の上昇、銀行の回復、強い経済成長という「いい均衡点」があり得る一方で、住宅価格の下落、銀行の経営悪化、経済の原則という「悪い均衡点」があるかもしれないわけだ。
サマーズ氏は、労働市場が崩壊し、住宅価格を一層押し下げるリスクを防ぐために、住宅市場の調整が済むまで経済を刺激する第2の財政出動が必要だと訴える。一方、政策立案者は住宅価格が適正価格を割り込むリスクを回避するために、焦点を絞った介入を行うべきだと考える人もいる。
ハーバード大学のマーチン・フェルドシュタイン教授は言う。「肝心なのは、ネガティブエクイティに陥った時に住宅ローンをデフォルトする動機を借り手から奪うことだ。さもないと住宅価格がさらに下がる」。
介入の是非はともあれ、今懸念されている景気後退が現実のものとなれば、米国の次期大統領は厳しい局面で就任することになる。経済の再活性化を図るため、外交政策や減税、国内改革を巡る野望は二の次にせざるを得なくなるかもしれない。

サブプライム危機と石油バブルがもたらす破棄と創造
2008/07/24
今年の世界経済は、大乱です。昨年から始まった米国発のサブプライムローン問題は、欧州の金融機関にも広がりました。金融機関の損失が明らかになり、米国の消費を支えてきた不動産が上昇から値下がりに転じました。そして、信用不安と消費減退のダブルパンチの懸念から、米国発の世界株安が始まったのが昨年の8月です。
昨年は、金融政策をつかさどる連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は事態を甘く見ていました。バーナンキ議長が政策金利の低下を渋るたびに、米国株が下落する事態が続き、そのたびに、世界の株式と不動産の市場が打撃を受けました。
今年1月に入ると、米国発の連鎖金融不安の危険を理解したバーナンキ議長は、グリーンスパン前議長の時代以上の、1週間余りで1.25%という、大幅で急激な政策金利の引き下げに踏み切りました。
そして、3月には、金利引き下げと同時に、サブプライムローン問題で破綻の危機に瀕したベアー・スターンズ証券を、JPモルガン・チェース銀行を通じて救済しました。こうして、米国の政策金利であるFF金利は5.25%から2%にまで大幅に下がりました。
こうして、金融不安と株式市場とのスパイラル的な下げの恐怖はひとまず去りました。預金金融機関である銀行だけでなく、証券会社までもが政府の救済対象になったことから、金融機関の連鎖倒産という、システミックリスクは遠のきました。世界恐慌、大不況という恐怖は緩和されました。
戦前の大恐慌のような、株式市場の暴落と金融機関の連鎖倒産が世界に広がるような事態にはならないのです。市場の下落や金融機関の破綻が一定のレベルに達したら、政府が救済するシステムが出来上がっているからです。その意味では、サブプライムローン問題が大恐慌に発展することはない、と言えます。
しかし、4月以降は、新たなリスクが世界経済と株式市場を覆いました。石油です。
上昇を続ける石油価格が、ドル金利に代わって米国の株式市場を下落させる最大の要因になりました。そして、世界の株式と不動産は再び下落の連鎖を続けました。
サブプライムローン問題から世界経済が減速し、株と不動産の市場の下落が始まった昨年8月から、石油価格は上昇速度を加速しました。当時の70ドル台から上昇を始め、今年の7月には150ドル目前にまで迫ったのです。1年足らずでほぼ倍になったことになります。
確かに、石油の需給は逼迫しています。イラク戦争とイラン情勢の緊張、ナイジェリアでの内戦不安などによって、石油の供給サイドには大きな不安があります。
しかも、石油需要の増加分の大半を占めると見られる中国やインドさらにはロシアや中東などの新興国では、旺盛なインフラ建設や自動車の普及や消費の拡大によって、今も石油需要が増え続けています。
加えて、90年代末までの安い石油時代には、採算の悪化から、世界的に新規の油田開発は進みませんでした。新規の油田は、海底や地層や砂の中などの採掘コストの高いところが中心となるからです。さらに、中東などの産油国は、過去に石油の増産が石油価格の値崩れを起こしたことから、生産能力を上げない政策を取ってきたと推測されます。
こうした点からは、石油の世界的な需給関係がタイトになったという説は有力です。
しかし、石油自体の需給関係だけでは、この1年の石油価格の上昇は説明しきれません。世界中の年金や政府ファンド、金融機関やヘッジファンド、富裕な個人の資金などが石油市場に流れ込み、石油価格の暴騰を招きました。株式や不動産に比べればはるかに小さな石油の先物市場は、資金の大幅な増加によって急上昇を続けました。マネーの需給関係が、石油そのものの需給関係を上回って、石油価格を押し上げたのです。
原因は単純です。石油が有利な投資先に見えてきたのです。いまや、世界の株や不動産は下落に転じました。ドル金利は低下し、為替としてのドルも低落しました。
一方で石油は、世界での需要増加に支えられ、堅調な価格上昇が期待できました。米国が金利を大幅に低下させ、それがドル安を生み、ドル建ての石油価格を上昇させるというサイクルも、4月以降顕著になりました。上がるから買う、買うから上がる、というバブルのサイクルが回転しました。
しかも、石油価格の上昇が、世界的な物価上昇を生みました。石油を組み入れた商品ファンドへの資金の流入が加速し、それが商品ファンドに組み入れられた石油以外の1次産品価格を押し上げ、世界的に物価水準を上昇させるという、サイクルが起きました。
とくに、途上国の物価が一気に上昇しました。生活費の中で食料などの必需品の割合が高く、エンゲル係数が高い大半の途上国の物価は、先進国よりも1次産品の上昇が物価全体に与える影響が大きいからです。
途上国での国民の不満は高まり、暴動やストが広がり、各国の政権の基盤が揺らぎました。世界的スタグフレーションのリスクが語られ、市場心理をさらに悪化させました。インドや中国の株は、米国や日本を大きく上回る下落を示しました。新興国の経済成長は終わった、という声も聞かれるようになりました。
しかし、騒ぎの中心である石油価格が上昇を続けるという予測には、大きな落とし穴が存在します。
スタグフレーションが起き、世界経済が大きく減速するならば、石油や1次産品への需要も大きく減退するはずです。世界中が昨年の倍の値段の石油を買い続けるのは理屈に合いません。
しかも、長期的には、エネルギーの供給は増えるはずです。風力発電や太陽光発電などの自然エネルギーは、石油価格の上昇によって、火力発電と競争できるレベルに近づいてきました。世界中で自然エネルギーへの政府の支援が拡大することを考えると、自然エネルギーの価格競争力は増すでしょう。
石油や天然ガスの増産も始まるでしょう。石油価格が過去9年で10倍になったのですから、それまでの20年間の石油安時代には休眠状態だった石油や天然ガスの探査と採掘も増えて、将来の供給も増えるでしょう。
原子力発電も、安全問題は未解決のままでも、世界での供給は急拡大しています。
このようにエネルギーは全体として需要は減速し、長期的に供給は増える状況で、石油価格はこのまま200ドルを突破し、天井知らずで上がるのでしょうか。
まず、世界経済、特に新興国経済は減速せずに成長し、エネルギー需要は急激に増える、あるいは、エネルギー供給は増えず、石油資源は枯渇する、という需給関係のファンダメンタル(経済の基礎的条件)に基づく考え方があります。この場合、石油価格の上昇が長期的に続くはずです。
もう1つ、石油市場の上昇はバブルに基づいており、ピークをつけた後は、買い手の資金流入がなくなり、需給関係で説明できる100ドル以下の水準に戻る、という考え方があります。
どちらが正しいのでしょう? 私はまず、新興国の経済成長は、多少鈍化するものの、1997年からのアジア危機のようなマイナス成長に陥るどころか、先進国よりはるかに高い成長を続ける、と思います。
次に、自然エネルギーや原子力は、5年という単位で見れば大きなシェアを占めたとしても、すぐに供給量増大というわけにはいかないと思います。とはいえ、10年後を考えれば、脱石油を進めた経済が新興国、先進国を問わず、エネルギー問題の勝者になるでしょう。ポイントは、新興国が70年代の日本のように、石油浪費型経済から省エネ型経済へと転換できるかどうかです。
あえて大胆に言えば、石油価格は70年代と同様に、これから1〜2年で、90年代末の20倍程度までの上昇水準である200ドル台を記録した後は、しばらく高い状態を保つでしょう。やがて、世界が脱石油や省エネの見通しを立て、石油の増産が明らかになると、次の低迷期に入るでしょう。
最初のバブルの関門である150ドルを前に減速しても、石油の需給関係に改善が見られず、一方で世界の株式市場が回復すれば、再び石油は上昇に転じるでしょう。
今後の石油の需給の大きなカギになるのは、石油の大消費国におけるエネルギー政策の転換です。
中国やインドが、石油価格に対する補助金をやめて課税を行い、一方で、代替エネルギーへの補助金政策に転換すれば、石油価格には大きな打撃でしょう。最大の石油消費国米国に、環境に目覚めた政権が誕生すれば、もちろん大きな変化となります。アル・ゴアが次の政権で重要な地位を占めれば、大きなシグナルになるでしょう。
ただし、イランとイラクの戦争で始まった79年の第2次石油ショックのように、米国のイラク撤兵や、イランの核開発とイスラエルなどとの対立から、再び中東が戦火に包まれれば、石油価格は高騰するでしょう。最大のリスクです。
世界経済への投資家の立場に立てば、70年代の日本が教訓になります。石油ショックの翌年の74年に、日本は悲観論一色に包まれました。インフレ率は24%に達し、高度成長がマイナス成長に変わり、銀座のネオンが消え、小松左京の日本沈没がベストセラーになりました。73年のピークから見て、日経平均株価は最大で31%も下がりました。
そこから日本経済は立ち直りました。田中角栄総理から三顧の礼をもって迎えられた福田赳夫氏が経済政策を大転換させ、「日本経済は全治3年」という体質転換を果たしました。
新たに誕生した福田内閣の「総需要抑制」政策によって、水ぶくれしていたマネーサプライは絞られ、不況が来ましたが、狂乱物価も収まりました。「減量経営」「省エネ」が企業の合言葉になりました。
石油依存のエネルギー政策も転換され、原子力発電がそれからの電力増強の主力になっていきました。こうして、世界一の石油輸入国であった日本は、ほとんど石油の輸入が増えない国に変わっていったのです。
そして、省エネや環境問題は世界的な流れにもなりました。米国では世界一厳しい自動車の排ガス規制が実施されました。
日本企業の中には、省エネと環境問題への対応を、企業への負担という守りの見方だけでなく、売り上げと業績向上のチャンスととらえるところが出てきました。日本企業の工場も製品も、環境と省エネに強いものに変わっていきました。
どん底の1974年に、日本株投資を始めていれば、大きなチャンスをつかんだはずです。それから16年後の89年末までに日経平均は約9倍の成長を遂げました。日本沈没という大悲観論の中で、冷静に日本の優良な企業に投資した人は大きな利益を得ました。株式ほどではなくても、跳ね上がった日本の金利がついた債券や、悲観論で売られた円を買った投資家も、相当の収益を得ました。
ここ1年のピークと最安値を比較すると、上海株式指数は半分以下になり、インドのSENSEX指数も4割も下がりました。サブプライムローン問題の震源地の米国株よりも大きく下がっています。インドの国債金利は9%台にまで上がりました。35年前の日本によく似ています。
今の高度成長国家であるインドや中国を歩いて分かるのは、不況の影におびえる先進国とは反対に、いかに成長と物価を抑えるかが課題となっていることです。
中国やインドの成長は続きます。しかし、成長がエネルギーと環境問題を起こすという矛盾も先鋭に表れています。その中で、環境最先進国である日本などの技術を取り入れて、自国のエネルギー危機と環境問題を解決し、世界の中で共存しようという、意志も見えます。物価高の中で、生活が苦しい農村の問題もますます深刻になってきました。持続的な成長をもたらす方向に転換すべきだという認識も高まってきました。
それだから、今ほど、日本の技術、企業、人材が必要とされている時はない、という期待を強く感じます。わずか1年前のジャパンパッシングの風潮とは様変わりです。もし、日本経済と新興国経済が、エネルギーと環境技術を中心に共存共栄関係に入れば、その時が、石油価格と世界経済と世界の株式市場の、長期的な転機になるでしょう。
もちろん、そんな長期の経済構造の転換の前に、石油市場が自らの重みに耐えかねて、暴落をするかもしれません。買ったポジションは、いつかは売らなくてはいけません。それがいつ来るのか、しばらく来ないのか、今の市場の焦点と言えるでしょう。
そして、将来振り返ると、石油の上昇が止まる前が、新興国投資への最適ポイントになるのかもしれません。注意して見ていきましょう。
ただ、21世紀の現在が70年代と大きく違うのは、先進国にはインフレが存在しないことです。その最大の原因は、世界経済の生産活動の中心が、人件費と不動産コストが低い新興国に引き続き移っていることです。このために、短期金利水準も日本が1%以下、米国が2%、EUが4%台です。先進国で10〜20%程度にインフレ率が上昇し、それに伴って、金利が急上昇して経済に壊滅的な打撃を与えた70年代とは大きく違います。
中国やブラジルの物価もかなり上昇しましたが、かつての大インフレ時代よりははるかに低い水準で推移しています。
となると、新興国の企業や、世界的にビジネスを展開する企業の収益も高い水準を記録するでしょう。そして、先進国における低金利と低成長、新興国における高金利、低株価、高成長という組み合わせが、世界経済の生産と消費と投資の中心をますます新興国に向かわせることになるでしょう。
新しい投資の流れと、その後のバブルのプロセスはすでに始まっているとも言えます。
石油が上昇を続ける今は、その前の調整プロセスと言えるでしょう。新興国の株や不動産が十分に下がり、世界経済の鈍化が明らかになり、世界的に省エネと自然エネルギーの開発が一般的な政策の方向になり、石油のバブルがはじけた時が、新興国中心の成長の路線が明らかになる時でしょう。

どこまで続く米国発信用不安(2)−金融緩和策はもはや通じないのか?
2008/07/18
米財務省が今週明けに発表した連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)という2つの政府支援機関(GSE)に対する支援策とともに、FRBはニューヨーク連銀を通じてこれらGSEに公定歩合での貸し出しを可能にする措置を公表した。
サブプライムローン問題が表面化してから、政府・中央銀行が公的救済に踏み出すのは、今年3月に投資銀行の旧ベア−・スターンズが事実上、破綻した時に次いで2例目となる。3月のケースでは、旧ベアーから優良資産と不良資産を引き離し、それぞれの資産をJPモルガン・チェースといった経営主体が引き継ぐのに、ニューヨーク連銀が融資などで関わった。
FRBはサブプライムの焦げつきにまつわる信用不安に対し、当初は利下げや流動性供給という伝統的な金融政策手段で事態の解決を図ろうとした。しかし、金融機関の経営不安の拡大が止まらない中、米国の金融当局も公的救済を実行する方向に着実に向かっている。なぜ、流動性供給や利下げといった伝統的政策では、一連の信用不安が収まる気配を見せていないのか。
私は、流動性供給や利下げは現在のところその当初の目的を相応に果たしていて、これまでのFRBの金融政策はその時期も内容もおおむね妥当であったと考えている。まず、昨年8月に金利が急騰してサブプライム問題表面化の発端となった短期金融市場は、FRBのみならずECB(欧州中央銀行)や英イングランド銀行などの世界の中央銀行が協調して行った流動性供給によって、現時点では金融システムを大きく揺るがすような事態には至っていない。
確かに、利下げによる金融緩和の効果については、銀行貸し出しの伸びが鈍化し始めているなど、効果は表れていない。将来に対する不安から現金保有の需要が高く、そのため信用リスクのある資産に資金が向かわず、短期市場で銀行間の取引が依然細ったままだ。
だがこれは金融緩和自体に問題があるのではなく、信用不安という特別な状況の中で、資金の巡りが悪くなっている状況が、解消されていないだけである。構造的な需要不足や投資資金の欠如が起きているのではなく、単に信用度や流動性が高いと思われる安全資産に資金が偏在しているだけだ。資金の循環を促すには、信用不安を取り除く必要がある。
信用不安により金融機関が公的救済を必要とするに至った原因は、金融政策の手法にあるのではない。それとは別の、米国の金融構造そのものに、根源があったのである。
今回のサブプライム問題の最大の帰結の1つは、米国の金融構造に組み込まれていたいくつかの神話の矛盾が、サブプライム問題をきっかけに次々と明るみに出たことであろう。金融政策の本来の機能を果たすためには、この矛盾を解消することが不可欠だ。
その神話とは、まず、サブプライムの住宅ローン債権を集めて組成された証券化商品が、実態より高い格付けを取得し、投資家がそれを信頼し、投資してきたことだ。皮肉なのは、神話作りに関与してきた格付機関が自ら格下げに打って出たことで、本来の価値に再評価することで解消されることになったことだ。
神話崩壊の影響は、通常の金融機関の次に、いわゆるモノラインと呼ばれる金融保証会社に派生した。モノラインは特別法で設立された存在であることから、地方債などモノラインが保証する債券の発行は、長年、高い格付が付与されていた。しかし、それも大手のモノラインが格下げになったことで、ここでもいわば痛みを伴う調整が今後余儀なくされる可能性が高い。 そして今回のGSEである。GSEも特別法により設立された長く複雑な歴史を持つが、そのよりどころは政府の「暗黙の保証」と言われる神話によって、米国の住宅ローン市場の拡大の必要不可欠なシステムとして機能してきたわけである。
GSEの信用リスク増大に対しても、痛みを伴う損失処理を伴う合理的な再評価により再出発というやり方があり得る。
このような形で様々な矛盾を解消していけば、金融緩和の効果は、信用スプレッドの縮小と資金の偏在解消という形で有効に機能し始めよう。それによってGSEの資金調達コストが下がれば、住宅ローン金利は下がり、再び必要なところに資金が供給され、住宅販売は伸びるだろう。
もちろん今後、政府・中銀のフォーラムが勧告したように、金融商品のリスク評価が販売者・投資家・格付会社によって、すべて適切に行われる必要があるが、その際、当初は、貸し出しにまつわる審査は厳格化されることから、その分、住宅バブル時のような市場拡大は望めない。その代わりに、適正なペースでの住宅金融拡大で経済は再び順調に回り始めるであろう。
商品高・原油高についても、信用不安を背景とした資金偏在が商品に向かっている部分が信用不安解消により調整されて初めて、本来の需給を反映した価格が明らかになる。これをベースに、金融政策で景気の調節と物価調節のバランスを適切に運営することが可能になる。
改めて強調したいことは、こうした神話の矛盾の解消プロセス自体は、伝統的な金融政策の守備範囲ではないことだ。
金融政策とは、市場原理をベースに通貨量、金利などを調節することで、各国の金融市場とマクロ経済構造に見合った方法で、雇用の最大化や物価の安定を図るものである。そこには当然に各国の経済・社会制度という前提が存在する。サブプライム問題は、米国にこうした制度の抜本的な調整を強いる契機をもたらした、と言える。
その際に、市場参加者のリスク管理の甘さや、それを許容してきた当局の金融監督の甘さを批判するのは容易である。しかし、金融機関の販売姿勢や、市場参加者のリスク管理手法という技術的な問題のみならず、過去何十年にもわたり米国の社会システムに組み込まれた制度の矛盾を、単に現在の個別市場参加者や現在の政策担当者のせいにするのは、やや酷ではないか。
批判や非難の嵐に包まれても、神話の解消が順調に進めば問題はない。ただし、GSEについては、この神話の矛盾の問題が先送りされる可能性が高いと言わざるを得ない。
というのも、1970年以降米国の住宅資産価値は、年平均8.8%で増加してきた。現在の総額は約20兆ドルに及び、名目GDP(国内総生産)の1.4倍の金額に相当する。1970年には住宅資産価値の総額は、名目GDPの0.8倍であった。
住宅は、いわば長きにわたり米国経済の根幹となってきたのである。ここにメスを入れることは、たとえそれが理にかなっていたとしても、経済への影響を考えれば容易に踏み込めるものでもないだろう。
現実的には、GSEの破綻を回避するために今後も様々な方法で公的支援の手段が取られる可能性が高いだろう。その場合、住宅ローン市場の痛みは回避できても、米国政府の抱えるリスクの増大、政府のバランスシートに対する信頼の低下という別の問題が、発生する可能性が高くなる。
おりしも為替市場では、米ドルがその価値を大幅に弱めている。また米国の株価は今年に入り日経平均株価を超える下落となっている。米国債はいまだ信用不安時には、質への逃避の流れで買い進まれる傾向がある(これも神話の1つと言えるが)。
今後、米国政府に対する信認が揺らぐようであれば、「米国債は安全」という神話も崩壊する可能性がある。いわゆるトリプル安である。
これを回避するには、1つはあらゆる手段を講じることで、金融システムを維持することによって経済の回復を図る。もう1つはあるいは大胆な政府支出のカットで、政府財政を少しでも好転させることで信認の維持を図る。
いずれを取るかは、次期政権に課される1つの大きな課題となるだろう。
米国はいずれかの方法で、信認をしぶとく維持する可能性が高い、と考えられる。

どこまで続く米国発信用不安
2008/07/17
2008年7月第2週に米金融市場で起こった事は、近年まれに見る過激な展開だった。まず、米地方銀行で住宅ローン大手のインディマック・バンコープが破綻した。破綻行としては、過去最大に近い規模である。
そしてもっと重要なのが、住宅価格のさらなる下落により、米政府支援機関(GSE)と呼ばれる住宅金融会社、米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の2社の流動性不安が頂点に達したため、米財務省とFRB(米連邦準備理事会)がかなり思い切った対策に踏み切ったことだ。
現時点で言える確かなことは1つしかない。もしこの2つのGSEが破綻すれば、もはや政府に打つ手はなく、米国経済は崩壊する、ということである。
最初に断っておきたいが、インディマックの破綻は今回のGSE危機の直接の原因ではない。銀行の破綻はインディマックで今年5行目であり、その株価の急落(1年で25ドルから0ドル近くに下落)ぶりを見ても、早晩破綻することは大方予想がついていた。
ご承知の通り米国では、銀行預金の10万ドルまでは保証されており、その額を超える預金も、銀行が適正価格で投資家に売却された場合は預金者の手元に戻ることになっている。この制度のおかげで、これまでは銀行が破綻しても金融システムがパニックに陥ることはなく、取りつけ騒ぎも起こらなかった。
銀行破綻が今後拡大すれば、間違いなく重大な問題となるだろうが、今のところ破綻の数は、1990〜92年の840件に比べればごくわずかである。
しかし、今回起こった2つのGSEの経営不安は、全く話が違う。GSEは、国民の住宅保有を促進する目的で米議会が設立した。この目的の実現については非常によくやってきたし、むしろやり過ぎだったかもしれない。
両GSEは金融機関から住宅ローン債権を買い取り、2社が保証する証券化商品として売却する。こうした保証は住宅ローン担保証券を売却するうえで義務づけられているわけではないが、投資家には非常に人気があった。
保証のおかげで銀行は何十年もの間、住宅ローン融資が実行しやすかったし、逆に債権を金融市場に売却して得た資金で、また新しいローンを提供できた。結果、全米の住宅保有率は68%以上と、家計貯蓄率がゼロでかつ貧富の差が激しいお国柄にしては、驚異的な実績を誇った。
だが、その無理がたたり、GSEのバランスシートは、もはや制御不能な状況に陥っている。現在、ファニーメイが保有・保証する住宅ローン債権は約3兆ドル、フレディマックは2兆2000億ドルに上る。全米の住宅ローン残高の実に約46%をこの2社が抱えていることになるのだ。
今のところ、住宅ローン債権のデフォルト率は非常に小さいため、GSE2社の負担はさほど重くはない。だが今後、2社のポートフォリオのわずか2%が焦げつくだけで、1000億ドル以上の資金が必要になる。今年3月末時点で2社合わせても資本は810億ドルしかないのに、最近の株式相場ではさらに資金が必要になっても株売却が難しい。
かつてならまるで考えられないことだが、今や両公社の倒産までも現実の可能性として受け止められている状況である。こうした不安から、2社の株価はここ数カ月低迷し、11日にパニックが頂点に達したというわけだ(両社ともに昨年から85%以上下落した)。
政府が週末にもかかわらず行動を起こさざるを得なかったのは、そのためである。政府による救済策は以下の通りだ。まず2つのGSEは、FRBから公定歩合で資金を借り入れできる。一方、財務省は両社への融資枠拡大を議会に求めると発表した。
財務省はまた、必要な場合のみ実施する両公社の株式買い取り権限を、議会に求めると見られる。議会も住宅市場対策をまとめている最中で、初めて住宅を売却した者への減税などにより住宅価格下落に歯止めをかけ、差し押さえ回避を図ろうとしている。
それにしても、今後は一体どうなるのか?
米国ではまだ景気後退(リセッション)は起きていない。こんな状況なのに信じ難いかもしれないが、GDP(国内総生産)はいまだ縮小せず、失業率も好況時からわずか1%上がっている程度である。
だが両公社が破綻すれば、間違いなく大惨事を引き起こす。政府は当面、両公社の債務不履行を受け入れられないし、絶対にさせないに違いない。両公社が債務不履行に陥れば、住宅市場は完全に崩壊し、劇的な景気後退につながるからだ。景気後退を避けるため、政府は「インフレやむなし路線」で、住宅市場への資金投入を選んでいるようである。
しかし、インフレを促進するだけでGSEが救済できるわけではない。2社の損失がポートフォリオの5%に達すれば、追加で投入が必要な資金は何と2500億ドルという気が遠くなるような額になる。万が一そのような事態になればインフレは制御できなくなり、ドルは急落、ファニーメイとフレディマックは政府の介入もむなしく、金融システムにもはや不要なお飾りに過ぎなくなる。
政府がそこにタイミング良く資金供給できるとは到底思えないからだ。非常事態が現実のものとなれば、政府が必要な支援に着手する頃には、住宅ローン市場と住宅価格は崩壊している。政府はGSEの債務不履行を回避することはできても、米国経済を救うことはできないかもしれない。
もはやそうならないよう願うばかりだ。

円安の陰に円調達ー世界の資金調達を担う日本
2008/07/16
今年6月は円安の月と言えた。対ドルで104円を上回るほどの水準から、一時108円を割り込んだだけでなく、対ユーロ、対ポンド対豪ドルなどに対しても、円は、軒並み一方的な下落をたどった。金融市場の目が米欧の金融政策動向に注がれる中、ともすれば「蚊帳の外」に置かれても不思議でなかったはずの円相場が、振り返ってみれば、最も明確な方向感を示していたのは意外なことである。
しかも、一方で原油価格は未曾有の高騰を続け、その背景にはイラン情勢やナイジェリア情勢など、いわゆる「地政学的リスク」の高まりがあった。原油価格の高騰が資源を持たぬ日本に不利なことは確かだが、「地政学的リスク」の高まりと投資家の「リスク回避」の動きは、従来であれば、むしろ円高を招いてもおかしくない要因だったはずだ。
その円安の正体として、通貨市場で盛んに取り沙汰されたのは、6月が日本の「ボーナス月」という事実である。日本企業の多くが従業員に対してボーナスを支給するこの月に、日本の個人投資家の間から大量の外貨資産購入が持ち込まれ、それが円を押し下げたとの見方だ。
この見方は、欧米のヘッジファンドなどの間で抜群の説得力を持った様子で、実際、外貨建て投資信託や売り出し債(個人向けの外貨建て債券)の動向に関する問い合わせが引きも切らなかった模様である。
しかし、6月の円安をボーナスマネーのせいにするのは、我々日本人にしてみれば、そもそも不自然な発想ではないか。「ボーナス月」と言っても、ボーナスが支給されるのは、大抵の企業で、20日前後過ぎの給料日だ。支給されたボーナスが、間髪入れずに投資に回る割合がそれほど高いとは思われない。
ましてや、支給前からその運用先として外貨資産が買い上げられることなど、考え難い。こんな中で気がついたことがある。
「米シティ、個人向けサムライ債発行へ 最大1000億円(6月10日)」
「サムライ債発行額急増 08年度9000億円突破(6月13日)」
「邦銀協調融資、外国企業向け大幅増(7月1日)」
そして、「世界の協調融資4割減(7月7日)」…。
いずれも日本経済新聞からの記事の見出しだが、日を隔てて掲載されたこれらの記事と進む円安とが、1つの線でつながっているように思えた。
サムライ債は、海外の政府や公社や優良企業などが、日本国内で発行する円建て債券だ。協調融資も邦銀が主役を務める以上、その資金の大半は円で調達されるものとみていいだろう。一方で、世界に目を転じれば、協調融資による資金調達は大幅に減少していると言うのだ。つまり、一連の記事は、欧米の大手金融機関が、昨夏のサブプライムローン危機以降、資金繰りに汲々とする中、日本、すなわち円市場が、世界の資金調達の主役に躍り出た事実を描き出している。
円による資金調達が世界の資本市場を席巻している様子は、金融市場の動きからも読み取ることができる。円の変動金利と、ドルの変動金利とを、将来にわたって交換する、「ベーシススワップ」という金融商品の変動が今年6月に前後して、はっきりと円金利の「受け取り」圧力が強まっている様子を見て取れるデータが手元にある。
債券発行にせよ、協調融資にせよ、通常、日本国内で円資金を集めた海外のボロワー(発行体/借り手)は、その資金の使途に合わせ、円をドルなどの外貨に交換する。その時、為替市場で円を売却し、外貨を購入すれば、話は簡単だ。
しかし、それでは莫大な為替変動リスクを背負い込むことになる。そこで、実際には、将来的に外貨を円に交換し直すという約束で、集めた円を外貨と交換し、その間、円金利を受け取る一方で外貨の金利を払い続ける契約を結ぶ。
こうした仕組みを通し、円資金を調達したはずのボロワーは、実質的には外貨資金を調達し、それに対し外貨で利息を払う格好になる。「ベーシススワップ」が6月に前後して円金利の「受け取り」超に傾いているのは、このような仕組みを提供した金融機関の間で、将来的に支払う円金利をヘッジするために、あらかじめ円金利の受け取りを確保しておく圧力が高まった結果と見るのが妥当ではないだろうか。
何故そんな面倒なことをするのか。
外貨資金を調達し、外貨で利息を払うのであれば、最初から外貨で資金を集めればいい。せっかく低金利の円で資金を調達しても、実際に支払う金利が外貨の金利では、低金利の恩恵にはあずかることもできない。しかし、円建ての資金調達が、昨今、隆盛を誇るのは、新聞記事を読む限り事実であるし、「ベーシススワップ」の値動きからも裏づけられる。
単純明快な答えは、「円=日本の方が潤沢な資金があるから」ということになろう。日本が資金調達の市場としてもてはやされるようになった経緯は、欧米に吹き荒れたサブプライム危機と無縁ではない。
サブプライム危機の影響が比較的軽微であった日本の資金市場は、有り体に言ってしまえば、「財布の紐が緩い」市場と言えるわけだ。資金繰りに汲々としている市場よりも、「財布の紐が緩い」市場の方が、資金調達の条件が有利になるのは自然なことだろう。
それでは、円市場の「財布の紐が緩い」のが事実として、円相場との関連をどのように解読したらいいのだろうか。上述の通り、円建てで調達された資金は、たとえ資金の使途が外貨であったとしても、通常は為替市場を通さずに外貨に転換され、論理的には、円相場に一切の影響を与えないはずだ。
しかし、第一に疑われるのは、調達された円資金の一部でも、為替市場を通して外貨に転換されている可能性はないか、ということだ。調達資金の全額に対して為替変動リスクを負うのは、非常に大きな冒険と言えるが、その資金の一部だけなら…。
そうすれば低金利の恩恵にもあずかることができる。つまり、円で資金調達した主体は、その一部で「円キャリー取引」をすることになるが、円建て資金調達の規模がこれだけ大きくなれば、一部といえども、円相場に与える影響は無視できないものになり得る。
それ以上に気がかりなのは、「財布の紐が緩い」日本が、またぞろ世界の資金調達市場になっている事実だ。調達された円資金が、はっきりとした使途に向かって外貨に転換されていくのとは対照的に、外貨への転換を提供した金融機関などの手元に丸々残る運命にある円は、その調達資金が返済されるまでの期間、「余剰」資産として運用され、金融市場を巡り巡ることになる。
およそ市場の価格形成の根本に、「需給」というものがあるのなら、一方に「財布の紐が緩い」市場で集められた「余剰」資産があり、他方に流動性の逼迫した、明確な使途が待っている資産があった場合、どちらの資産が強くなっていくかは、自明のことと言えよう

買収防衛策で経産省が方針転換ー国内産業・市場に追い風
2008/07/11
経済産業省の企業価値研究会が6月11日に「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策のあり方」と題する報告書を公表した。この研究会は、2003年12月にあった米国系投資ファンド、スティール・パートナーズによるユシロ化学とソトーに対する敵対的公開買付の試みなど、日本市場における敵対的M&A(合併・買収)の可能性が現実のものとなる中で設置された。研究会の議論は「企業価値報告書」にまとめられ、2005年5月に経済産業省と法務省が共同で策定した「企業価値・株主共同の利益の確保または向上のための買収防衛策に関する指針」の基礎となった。
ライブドアとフジテレビの間で展開されたニッポン放送の経営支配権をめぐる争い(2005年2月─4月)が社会的な注目を集めたこともあり、企業価値報告書とそれに基づく指針は、敵対的買収への対策を検討する日本企業のバイブルとなった。
それから3年。買収防衛策を導入した日本企業の数は500を超え、昨年8月には、ブルドックソースがスティール・パートナーズに対して発動した買収防衛策をめぐって初めて最高裁判所による判断が下された。こうした状況の変化を踏まえ、買収防衛策の火付け役とも言うべき研究会が、あらためて見解を取りまとめたのである。
注目されるのは、今回の報告書全体を貫くトーンとして、日本企業の買収防衛策や導入企業の経営者の姿勢に対する危機感とも言うべきものが強く感じられることである。報告書は、買収防衛策とは、本来、買収者とターゲット会社の経営陣が株主にとって、より優れた買収条件や経営提案を引き出せるよう交渉することを可能にするための仕組みだという認識に立つ。
ところがブルドックソース事件をめぐる最高裁決定以降、企業の間では、敵対的買収者に経済的損害を与えないよう金銭を支払えばよいとか、持ち合い等で友好的な安定株主を確保しておけば、経営陣の意に沿わない買収者は総会決議でいつでも撃退できるといった見方も広がっており、買収防衛策が交渉の道具というよりは既存経営者の保身のために用いられる危険性が高まっている。
報告書は、こうした現状に警鐘を鳴らし、買収防衛策が本来期待されていた役割に立ち戻ることを求めている。もちろん企業価値研究会のメンバーや主催者である経済産業省は、こうした報告書の姿勢は、2005年の報告書以来一貫していると主張するだろう。報告書の内容を詳細に分析すれば、そうした主張が牽強付会(けんきょうふかい)とも言えないのは確かである。
しかし、報告書が企業社会に対して発するメッセージは、前回が買収防衛策導入へのゴーサインだったのに対して、今回は、今後の新たな導入に対してはもちろんのこと、既に防衛策を導入した企業に対しても、そのあり方の再考を迫っており、大きく異なっている。
こうした中で経済産業省は、投資ファンドの意義について分析した「ファンド事例研究会」の報告書を取りまとめ、投資ファンドの日本における活動の妨げとなっていると考えられる税制上の取り扱いについての改善を財務省に対して求めている。6月26日付「フィナンシャル・タイムズ」にも取り上げられ、「日本が外国投資家に対して暖かになった」という見出しで少なくともアジア版では一面トップで伝えらた。
これらは何を意味するのか。最近、経済産業省というと、英国系投資ファンドTCIによるJパワー株買い増し計画に対する中止命令を発動するなど、外国人投資家に冷たいイメージを持たれがちであった。外国ファンドを主たるターゲットと想定しながら検討されることの多い買収防衛策を後押ししてきたことや、事務次官が投資ファンドを軽視するかのような発言をしたことなども、経済産業省が開かれた資本市場に好意的でないという印象を与えがちであった。
その経済産業省が、あらためて投資ファンドをはじめとする投資家・株主の役割を重視し、上場企業の経営陣が保身に走ることを戒めようとしているのだとすれば、その意義は大きい。少なくともFT紙の見出しは、そうした方針転換の気配を読み取って付けられたものだろう。
そもそも経済産業省の役割は、日本の産業の振興・活性化である。産業の担い手が上場企業である場合、その振興は、資本市場の機能や投資家・株主との対話を排除しては成り立ち得ない。
また、日本の産業の担い手は、いわゆる日本企業だけには限られない。外資系であっても一向に構わない。真の産業振興のためには、時には産業の直接の担い手である企業に対して、市場の論理に基づく厳しい要求を突きつけねばならないこともある。ここのところの経済産業省の方針転換(とみられる動き)は、日本の産業と市場の中長期的な成長にとっても追い風となるものだろう。

トレーダー魅了する「金融工学」の魔性ーウオール街が生み続ける「錬金術」
2008/07/07
昨今のサブプライム・ショックは、米国金融資本主義の歪みを露呈した。信用格付けの低いローンを内包し、高度に重層化した金融商品が世界中にばらまかれ、その重層性ゆえに、その実態がいまだに把握できない。2兆ドル近いサブプライムローンのうち60〜80%が債務不履行になると予想される。不良債権化する住宅ローンだけで1.6兆ドル(170兆円)という規模だ。更に、サブプライムローンを震源として波及した損失は相当のものになるだろう。しかし、今ウオール街は、サブプライムよりも大きな爆弾に恐怖している。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)である。
CDSは、現物債券を取引することなくその債券発行者の信用リスク(デフォルトリスク)を取引するデリバティブであり、債券のデフォルト(債券不履行)に対する保証を売買する。スワップ市場は規制がなく、しかも債務担保証券(CDO)市場は2001年から06年にかけて5倍の5000億ドルの規模に急拡大を遂げた。トリプルA格付けがスプレッドの急拡大でトリプルB格の価値しかなくなる場合、景気後退局面ならば、ジャンク債にはデフォルト率の大幅な上昇が見込まれる。しかも、ジャンク債はCDOに多く含まれ、スワップ取引を通して世界中にばらまかれている。
CDSをはじめとするスワップ取引の主な参加者は、金融のエリート集団である大手投資銀行とヘッジファンドである。米財務省通貨監督局によると、JPモルガン・チェースのCDO関連スワップ取引は7.9兆ドル、シティグループは3.2兆ドルである。
昨年前半まで、住宅ローンの債務不履行率は低く、CDSにおいてもデフォルトリスクは低く見積もられ、保険学は低く設定されてきた。実際にデフォルトが増えたときに、保険金を賄う担保があるのか、また誰がリスクをどの程度抱えているのか、取引参加者の権利関係が複雑すぎて、CDO以上に全容の把握が難しい。この状況で債務不履行急増の局面になれば、サブプライム問題で弱体化した金融機関の息の根を止めることもありうる。」と米投資銀行のアナリストは指摘する。
CDOやCDSといった爆弾は金融工学と呼ばれる一連のテクノロジーによって生み出される。
1950年代に生まれた金融工学は、80年代後半に急速な発展を遂げた。レーガノミックスで規制緩和が進んだ米国では、新規の金融商品で高い投資収益を求める動きが活発となり、ウオール街の投資家たちは、緻密な投資モデルを求めるようになった。
パソコンの急速な発達もあり、クオンツ運用に注目が集まり、同時に緻密なリスク管理のスキルも求められた。おりしもソ連崩壊が秒読み段階となり、多くのロケット・サイエンティストや数学者がウオール街へ流れ込んだ。なにしろ前職の何十倍もの給与がもらえるのだ。世界中から優れた頭脳が吸い込まれウオール街は世界で唯一の金融工学理論の発信地となり、米国は金融資本主義を牛耳る権力を握った。ロケットが宇宙に飛んで無事に地球に戻ってくるまで、燃料が切れる、隕石にぶちあたる、エンジンが故障する、地上との連絡が途絶えるなど、さまざまなリスクが想定される。起こりうるシナリオを2000ほど想定し、コンピューターにかけて解析し、理論の有効性を検証する。理論は実践に移され、宇宙飛行が可能となる。
金融工学から生まれる新理論、すなわち「新しい設け方」もロケット工学に基礎をおく。ファンドに取り込まれた数学者、工学者たちは、遠大なる金融工学体系と経済の現状をみくらべながら、新たな前提条件を想定し、リターン獲得のスキームを見つけ出す。そして、コンピューター上でシュミレーションを繰り返し、そのビジネスモデルの有効性を検証する。これはきわめて数学的な作業である。
例えば、住宅ローンを担保とsたモーゲージ証券の格付けは、住宅の評価額とその最大の損失を想定した場合に起こりうる元本を失う確率によって決まる。またモーゲージ証券トレーディングでは、リスクとリターンと格付けとスプレッド、そして金利変動と償還の速度の相関について計測される。
ところが、数学的な理論には致命的なネックがある。
前提条件が崩れればすべてが「終わる」のだ。例えば、サブプライム問題におけるCDOの場合、信用格付けの前提となった最大損失の度合いを相当超えてしまうと、格付けとスプレッドから収益を生み出すはずの理論の前提条件は総崩れとなる。そして、リスク回避するモデルは機能不全に陥る。しかもおびただしい数の人が介在する経済活動では、宇宙飛行よりはるかに高い頻度で前提条件の崩壊が起こる。サブプライム危機において、この前提条件お崩壊を察知したジョン・ポールソンやフィルファルコーネ(ハービンガー・キャピタル)などの投資家は大もうけをした。
一方、金融工学は、投資家をおびき寄せる「人寄せパンダ」としての効果も絶大である。
金融工学の権威、マイロン・ショールズとロバート・マートンが取締役に顔を連ねたロングタームキャピタルマネジメント(LTCM)は94年の設立当初から12億ドル以上の資金を確保した。そして97年にショールズとマートンがノーベル経済学賞を受賞すると、その規模はさらに膨れ上がった。だが、98年、アジア通貨危機とロシア財政危機のあおりを受け、LTCMはあっけなく破綻。金融工学は権威失墜の危機に瀕した。ところがショールズは、2000年に新たなヘッジファンドを立ち上げ、その日本拠点プラチナ・グローブ・アセット・マネージメントには、現在、日本の投資家が多額の投資を行っている。
高度に数学的であり、聖地さを持ち味とする金融工学の理論を一般投資家は理解できないが、その理論が学術的権威によって築かれたと聞けば、優越性を信じたくなるのが人情である。
サブプライム以降の経済危機への懸念がひろまる今、次の商機を狙うヘッジファンドがうごめいている。
彼らは、金融市場も金融工学も破綻と生成を繰り返すことをよくしりつつ、新たな金融工学理論を探り、
投資スキーム実践の好機をうかがっている。
ひとつの金融工学理論が大きな収益をもたらすと、市場は熱狂に包まれ、明晰な頭脳の持ち主であるはずのトレーダーはその富の巨額さに酔う。信奉する理論のほころびの兆しに気づくことができず、破綻の憂き目をみる。このサイクルは、これからも延々と繰り返され、その一環としてCDSショックがまもなくやってくる。そして第二、第三のサブプライム・ショックが世界経済に激震をもたらすことになる。
杞憂であれば良いのだが・・・。

ユダヤ資本に翻弄される原油価格ー「バレル200ドル」の悪夢は近い
2008/07/04
ニューヨークの原油先物市場におけるWTI原油価格は7月3日、1バレル145ドルをつけた。
特に5月に入ってからの上昇は異常だ。5月5日に1バレル120ドルを突破してからわずか2週間後の5月21日には130ドル、6月6日には139ドルと1ヶ月で1バレル20ドルも上昇した。これほどの短期間での上昇は過去に例がない。しかし5月に入ってから世界の石油需要が特別に急増し、石油需給が逼迫したわけではない。逆に米国ではガソリン価格が史上初めて1ガロン4ドルを超えて米国内のガソリン需要はドライブシーズンの到来にもかかわらず、日量1000万バレルを大きく割り込んでいる。
つまり、WTI原油価格の決め手となる米国の石油需要は逆に緩和している。
なぜ、5月から6月にかけて原油価格はこれほど高騰したのか。その本当の理由は、米国投資銀行、有名投資家の相次ぐ原油価格上昇予測リポート、世界で一番権威があるとされる国際エネルギー機関(IEA)の実際の世界石油需要と乖離した強気の予測にある。
5月6日に米国最有力投資銀行のゴールドマン・サックスが原油価格は今後、半年から2年以内に1バレル150ドルから200ドルに上昇するというリポートを発表した。5月20日には有名な投資家ブーン・ケビンズ氏(小糸製作所への敵対的TOBで一躍日本でも名を挙げた人物)が経済専門テレビで、原油価格は年内に150ドルに上昇するとコメントした。さらには米国第3位の投資銀行モルガン・スタンレーが6月5日に原油価格は7月には150ドルに上昇するというリポートを公表した。こうした原油価格上昇予測の節目節目で投資家は原油投資は儲かるものと、ニューヨーク原油先物市場に殺到した。
投資銀行や有名投資家のリポートの内容は素人の分析であり、石油専門家からみれば乱暴なものだ。
産油国の石油供給はピークに達しており、中国をはじめとした新興経済発展諸国の石油需要の伸びに供給が追いつかず、原油価格は1バレル150ドル以上に高騰するという。
しかし、世界の原油生産が10年にピークを迎え、その後石油需給逼迫から原油価格は天文学的に高騰するという、いわゆるオイルピーク論は多くの石油専門家によって否定されている。東シベリア、サハリン、カスピ海、西アフリカをはじめとして、まだまだ開発されていない油田は無数にある。
それに加えて、原油価格高騰に拍車をかけている犯人は、IEAが毎月公表する石油市場月報の世界石油需要見通しだ。IEAが毎月公表する石油需給に関する報告は世界でもっとも信頼できる統計として
、米国、日本、欧州の主要メディアが大きく取り上げる。
原油価格予測を行う投資銀行の著名アナリストもIEA統計をもとに投資家向けのリポートを書く。IEAは主要石油消費国が中心となって1974年に設立された国際機関であり、エネルギーに関するもっとも権威ある組織である。特に中東産油国が最高の国家機密として自国の原油生産量を公表しない現状において、毎月月初に発表される石油市場月報は、世界の原油生産量、石油在庫量、石油需要見通しに関する唯一のデータとして世界中のアナリストが注目している。
その「権威ある?」IEAの月報が石油市場の需給状況を誇張しているのだ。
特に、元金融アナリスト出身のローレンス・イーグル氏が石油市場月報の責任者となってから、世界の石油需給に関して強気の見通しを発表し、その後に下方修正を繰り返す傾向が強くなった。
2008年に入ってからも、世界の石油需給見通しを4回も下方修正し、今年の石油需要増加を最初の日量200万バレルから80万バレルへ大幅に引き下げた。原油価格の今後を占う先進国の石油水準も需給逼迫を印象付けるように最初は少なめに発表し、その後に上方修正を行っている。
強気の石油需要見通し、少なめの石油在庫水準を発表するたびに投資銀行のアナリストは原油価格上昇予測を行い、投資家を煽る図式が定着している。
イーグル氏の予測は、商品ファンドやヘッジファンドを通じて原油先物取引を行っている投資銀行にとって都合が良い。そうした功績もあって、イーグル氏はJPモルガン・チェースのファンド・マネージャーに華麗な転職を遂げた。
こうした投資銀行主導の原油価格高騰に対して、経済産業省の北畑隆生事務次官は、「怒りを感じる。ウオールストリート資本主義の悪い面だ」とゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーを具体的に名指しで批判するという公的立場では異例の発言を行った。甘利明経済産業大臣も石油需給でみた原油価格は70ドルであり、それを超えた部分は投機であると言明している。
だが、投機の動きをもはや止めることは出来ない。
21世紀に入って原油市場は根本的に変質した。歴史を振り返ると、原油価格には常に支配者がいた。
1960年代まではメジャー(国際石油資本)が、70年代は石油輸出国機構(OPEC)が原油価格を決めていた。しかし、83年にニューヨークに原油先物市場が創設され、2003年のイラク戦争以降に金融資本が原油先物市場の主要なプレーヤーとなってからは、原油価格の支配権はユダヤ系の投資銀行に握られた。
ニューヨークの原油先物市場の取引高は、2000年には1日1億バレル程度しかなかった。しかし、現在は16億バレルにまで膨張している。しかも、市場取引高の9割は金融機関と投資銀行傘下の商品ファンドであり、商品ファンドのほとんどはゴールドマン・サックス、ソロモン・ブラザーズ、リーマン・ブラザーズの傘下だ。
つまり、ニューヨーク原油市場は、もはや石油を実際に利用する実需家ではなく、石油そのものにまったく興味のない、価格の変動による利ざや狙いだけのユダヤ系投資銀行に支配されているものだ。
もちろん投資銀行の動きを苦々しく思い、投機資金の動きを規正しようという動きもある。
しかし、米国のポールソン財務長官は、「現在の原油価格高騰は、投機によるものではなく、石油需給逼迫が原因だ」と公言してはばからない。ポールソン氏もゴールドマン・サックスの出身である。
ユダヤ系投資銀行主導による原油価格高騰に対して、イスラム教国である中東産油国は内心穏やかではない。しかし、中東産油の価格はWTI原油価格に連動し、買い手の少ないサウジアラビアの重質原油も130ドル以上で売れ、国家の収入は増える。しかも、原油価格高騰の責任は投資銀行に押し付けられる。居心地は悪くない。
このまま投資銀行の強気の予測リポート公表と原油先物市場支配が続く限り、原油200ドルの悪夢到来は近い。

カネ余りで世界的インフレ加速の恐れ
2008/06/20
スペインやフランスでは、数万人のトラック運転手がガソリン価格高騰に抗議するストライキを行い、各地の幹線道路や国境付近を封鎖するなどした。エジプトでは、小麦粉の補助金削減に抗議した群集が道路を封鎖し、警官隊と衝突。さらにインドのカシミール地方では、燃料費高騰に数千人の公務員が抗議デモを行い、警官隊が放水銃で応戦する騒ぎとなった。
これらは世界中で大きく報じられているニュースのほんの数例にすぎない。食料品や燃料の価格上昇に抗議する声は高まる一方だ。
世界経済は米国の信用収縮の後遺症に苦しみ続けているが、新たな病気が急速に蔓延し始めた。1970〜80年代の慢性病“インフレ”が突如、すさまじい勢いでぶり返してきたのだ。現在、欧米諸国での価格高騰に注目が集まるが、困ったことに新興市場諸国でもインフレ率が急速に上昇し始めている。
例えば、中国の5月のインフレ率は7.7%。4月の記録的な8.5%から減速したものの、昨年上半期の3.2%と比べ大きく上昇している。昨年8月には4%にも満たなかったインドも、5月には8%を突破。ロシアでは、この1年間で7.6%から14.3%とほぼ倍増した。
小規模新興市場国のインフレ問題はさらに深刻だ。現在、ウクライナやベネズエラではインフレ率が30%を超え、ベトナムでは25%に達する。サウジアラビアでは過去27年間で最高の10.5%。「状況はかなり深刻」と語るのは、米シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所(ワシントン)のアンダース・アスルンド上席研究員。「インフレ問題は各国共通の頭痛の種だ」。
表面的には、コモディティー(商品)価格の上昇が、このところのインフレ率急伸を招いているように見える。注目を集める原油価格や穀物価格ばかりでなく、金属価格や乳製品などの食料品価格も急騰している。こうした価格高騰の原因には、投機的な売買や凶作、ドル安などが挙げられる。だが、これだけ多岐にわたるコモディティー価格の同時高は、単なる“偶然の産物”なのだろうか。
答えはおそらく“ノー”だ。実際、多くのエコノミストが、この現象を世界的なインフレ傾向の表立った証拠と見なすようになっている。しかも、かなり根が深く懸念すべきものだという。
米ハーバード大学経済学部の教授で、国際通貨基金(IMF)の前主席エコノミストのケネス・ロゴフ教授は、「この世界的なインフレ傾向は一時的なものとは思えない」と語る。今回のインフレは、過去の大型インフレとは異なると警鐘を鳴らす。特定のコモディティーの不足ではなく、世界的な“カネ余り”がその元凶だという。「悲惨なことに、投資家は自分の身に降りかかりつつあることに全く気づいていない」。
世界的に信用収縮が広がる中、資金があり余っているという主張は意外に思えるかもしれない。だが、一見矛盾しているかのようなこの主張には明確な根拠がある。
米国を中心とする先進国では、信用収縮の影響で深刻な景気減速が懸念されている。一方、世界的な物価動向は、中国やインドなどに代表される新興市場諸国の影響力がますます拡大。新興市場諸国では、信用収縮の影響はほとんど見られない。むしろ、通貨供給量(マネーサプライ)の急増により、経済は現在も猛烈な勢いで成長を続けている。
新興市場諸国の中央銀行当局者やエコノミストからは、インフレに対する危機感がさほど感じられない。物価の上昇は局所的に制御できない国際的な影響力が原因で、コモディティー価格が落ち着けばインフレ率も落ち着くと主張する者も多い。
インドのエナム証券のエコノミスト、サチン・シャクラ氏は、国内の物価上昇率の8割は穀物や金属、原油といったコモディティー価格の上昇が原因と主張する。「インド政府が過剰反応しないかが気がかりだ」。
とはいえ、米連邦準備制度理事会(FRB)の最近の利下げにより、世界的にインフレ問題は深刻化する傾向にある。多くの新興市場国の通貨は事実上ドルに連動しており、米国が利下げすれば金利に上限が設けられた格好になるからだ。しかも、コモディティー価格の高騰が広範に及ぶ問題の一端に過ぎないことを示す証拠が増加している。
スイスの投資銀行UBSによれば、新興市場諸国は全般的にコアインフレ指数(食料品とエネルギーを除く物価上昇指数)が上昇傾向にある。中南米6.8%(前年同月5.0%)、アジア4.1%(同2.4%)、東欧8.3%(同5.4%)と、それぞれ前年同月を上回る。
「世界のインフレ動向で最も憂慮される点は、コアインフレ率と賃金インフレ率の上昇傾向だ。この傾向が顕著に見られるのは経済発展途上国圏。圏内各国のいまだに流動的な金融政策や金融情勢の引き締めが現在の緊急課題だ」と、UBSのエコノミスト、アンドリュー・ケイツ氏は指摘する。
“低金利状態”がインフレの元凶の1つである証拠はいくらでもある。中国やインド、ロシアなどの多くの新興市場国で、指標となる実質金利はマイナス。例えば、中国の5月のインフレ率7.7%に対し、中国人民銀行(中央銀行)の同月の主要貸出金利は7.47%に抑えられたままだ。「BRICs」4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)中、金利引き締め政策を取っているのは、実質金利が記録的高水準にあるブラジルだけ。だがそのブラジルですら、インフレ懸念はむしろ高まっている。
UBSの指摘によれば、過去5年間、中南米、アジア、東欧の金利は名目国内総生産(GDP)の成長率を常に下回ってきた。金利が名目GDPに等しいか上回っているのが常態だった1990年代とは対照的な状況にある。
実際、新興市場国の指標的金利から金融状況を正確に読み取るのは困難だろう。だが、ほかに信用できる指標も見当たらない。ここ数年、中国やロシア、ペルシャ湾岸諸国などは巨額の経常収支黒字を計上してきた。外貨準備高は記録的水準にまで積み上がっている(現在の準備高は中国が約1兆7600億ドル、ロシアは約5400億ドル)。エコノミストの多くは、これらの国の通貨レートが割安との明白な結論に達している。外貨準備高の増加により、インフレの温床となるマネーサプライは増大中だ。
新興市場諸国の中央銀行は高まるインフレ問題を警戒し始めている。最近、金利水準の是正に乗り出し始めた銀行も多い。中国人民銀行は6月7日、銀行の預金準備率を異例の大幅の1.0ポイント引き上げ、17.5%に改定した。ロシア中央銀行も6月10日、2週間で2度目の利上げを敢行。リファイナンス金利(公定歩合に相当)は0.25ポイント上がり、10.75%となった。
各国中央銀行の是正措置により、インフレが制御不能になりかかっているというエコノミストの懸念は幾分解消されてはいる。だが、金融引き締め策が実施されれば、新興市場諸国の経済成長は鈍化することになる。既に停滞傾向にある世界経済の見通しは暗い。
見通しを暗くするさらに根本的な理由もありそうだ。現在の世界的なインフレ傾向からは、新興市場諸国の長い好景気が終焉を迎える危険性も見え隠れする。生産能力は頭打ち。資源にも限りがある。今後、低成長および高インフレ時代が長期化するのは避けられないかもしれない。
「長期的な景気循環ではよくあること」とアスルンド氏。「新興市場国はかつてない好景気の真っ只中にある」。政策責任者はそうした状況下で慢心しがちだと同氏は指摘する。
これは実に危険な兆候だ。新興市場諸国の中央銀行は長年、驚異的な成長を遂げる状況に慣れきってしまっている。時代の変化を認めることに抵抗するかもしれないのだ。
「現在の問題は、小幅な景気減速を避けようと、中央銀行が利上げを躊躇していることだ」と、ロゴフ教授は指摘する。「だが、後になってインフレを抑え込もうとした時、そのつけが回ってくるかもしれない。80年代、インフレを抑制するには10年を要した。中央銀行の対応が遅れれば、またも窮地に陥る羽目になる」。

「アクティビスト」狡猾なPR戦術
2008/06/19
Jパワー経営陣と筆頭株主の英投資ファンド、ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)の対立は、ついに「プロキシーファイト」に発展した。
年間60円の配当を最大120円に引き上げることや、株式持合いの制限、3人以上の社外取締役の導入などを対案している。配当については、Jパワー側が70円への引き上げを決めたものの、TCIの提案は全て退けている。
こうした動きは今後も増えていくのか。
ある外資系ヘッジファンドマネージャーは、「不況期に入って株価全体が落ち、どの株を買っても儲けにくくなってきたので、会社に圧力をかけるタイプの投資家が復活してきた。好況期には非効率な会社もそれなりに儲かっており株価も高いが、不況になると割安になる。そこが、アクティビストと呼ばれる、会社に圧力をかけるタイプのファンドの活躍できるタイミングなのだ」という。
また、ある外資系投資銀行家は、「今回、Jパワーが狙われたのは象徴的。エネルギーは役割を失いつつある経済産業省の最後のドル箱なので非合理性が残っている。ブルドックソースのように現金を支払ってしまったケースが最たるものだが、非効率な産業で経営陣が経営権を守るために非合理的なことをしてくれたほうがチャンスが広がる」という。
それではアクティビストがターゲットを決めた場合、どのような手を打ってくるのか。
企業法務に詳しいある弁護士は、「以前のような露骨な買収・企業解体型の乗っ取り屋は、他の株主や世論を敵に回してほぼ姿を消した。現在のアクティビストは自分だけで戦わず、他の投資家や世論を見方につけるべく、PRに力を入れてきます。票を集めるという点からは政治に似ています」という。
実際、アクティビストは、選挙並みのイメージ戦略を展開するために広告代理店はPR会社を積極的に活用しており、PR産業のなかでも、ヘッジファンド向けは最大の成長分野なのである。PR活動は以下の3つに分かれている。
第一のポイントは、理論武装を行い、経営改革を求めるいわば「マニフェスト選挙」である。例えば、著名投資家のアイカーン氏がモトローラに、会社の事業の三分割を要求した際には、外部の専門家を雇って、数百ページにも上る経営改善報告書を準備した。会社側が反論すれば、再反論し、新しい論点、要求ポイントにエスカレートさせ、世間の関心を高めていく。さらには、国会のテレビ中継を意識した論戦のように、要求ポイントをフリップで説明する記者会見を開いたりもする。それでも、経営陣が要求を受け入れない場合には、その経営改革案を実現するための、社外取締役候補を立てて圧力をかける。
第二のポイントは、「メディアを使ったイメージ戦略」である。
TCIが株式会社化されたドイツ証券取引所と対決したときは、金融機関に大きな影響力があるファイナンシャルタイムズが大任を担った。当時のドイツ証券取引所のCEO、ザイフェルト氏の株主軽視の姿勢、経営上の問題点などがちょうど良いタイミングでリリースされていった。ザイフェルト氏の著書によれば、これはすべて捻じ曲げて作ったストーリーをリークし、メディアが増幅させるというTCI側=ロスチャイルドグループの巧妙な戦略だったという。メディアでのイメージとなればテレビ映りも重要である。
アイカーン氏は最近、赤ネクタイ、青と白のワイシャツという服装が目立つがこれは米国の政治家がよく使う、星条旗をイメージする服装である。つまり、自分が「米国の大義」を象徴していることを暗に伝えているわけだ。いまや大統領選挙をはじめ、高学歴へのアプローチに重要な役割を果たしているインターネットにもアイカーン氏は手を伸ばしており、近く個人のブログを立ち上げることを発表している。日本を舞台とするなら米国の大義ではなく、日本に合わせた広報イメージ戦略が本来必要である。経営陣が合意したM&Aが株主総会で否決された国内で初めての例となった東京鋼鐵の場合は、いちごアセットマネジメントのスコット・キャロン社長が日本の永住権を持ち、日本語も堪能であり、「一期一会」から社名をつけるという日本人以上に日本に愛着を持つ投資家としてのイメージを持っていたがゆえに他の投資家を仲間につけることができたといえよう。
第三のポイントは、「金儲けのイメージを和らげる」である。
いかに大義を掲げようともファンドの目的は利益を上げることにあるから、社会一般の協力を得にくい。そこで、こうしたファンドは往々にして社会貢献に協力的である。
実際、TCIの利益の一部は発展途上国で貧困に苦しむ子供たちの生活改善を主な目的とする非営利組織「ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド財団」に寄付されており、社名からしていかにも世界の子供たちのために投資しているイメージを与えている。
既に数千億円の資産を所有するアイカーン氏に至っては、もはや金儲けよりも、「株主利益を主張することで資本主義を変えた男」として歴史に名を残すことがインセンティブになっており、オバマの政策を「ばらまき政治」として批判している。
こうしたアクティビストに対して、日本企業はどのような備えをすればよいのか。
最大のサメよけは効率的な経営で高株価を維持することである。
アクティビストは経営の非効率と経営陣の保身に飛びつく徒花であるから、効率が良い会社には寄ってこない。もちろんIRは重要だが、最終的な処方箋にはならない。というのも、会社にとって都合の良いことだけを発表するIRはかえってアクティビストにより問題点が暴かれて大々的に喧伝されるリスクが高まるからである。実際、ドイツ証券取引所もIR優秀企業として表彰されてきたが、そんな名声は防波堤にはならなかった。
最終的には、ファンド会社と会社トップの宣伝合戦、株主と世論に対する選挙活動にならざるを得ない。企業トップがファンドの掲げる大義に負けないような理念を発信できる優れた代弁者でなければ、アクティビストの餌食になりかねないのである。



















