
通貨:円の本当の実力とは
2008/03/19
円ドルの為替レートは、’07年前半まで一貫して円安ドル高で推移した。
日米の金利差を背景にした円キャリー取引が活発に行われたためである。
日本の個人投資家によるFX取引への参入も円安に拍車をかけた。
昨年夏以降、米国でのサブプライムローン問題以来信用不安顕在化で米国の相次ぐ利下げによって日米金利差は縮小、円キャリー取引は解消に向かい急速に円高ドル安が進行している。
現在の円高局面は日本経済の実力を反映した「良い円高」ではなくドル売りの世界的傾向の中での相対的に円が買われただけの、いわば「悪い円高」局面といえる。
ただし、ドル以外も含めた世界の主要通貨の中での円の価値を指標化した「実質実効為替レート」で見ると現在の円はまだ円安水準にある。変動相場制に移行した1973年3月の同為替レートを100とした試算値によると、85年9月のプラザ合意後、ほぼ一貫して110〜160台で推移してきた(数字が大きいほうが円高)。ところが、’06年10月以降は100を割り込み、’08年1月時点でも99.5.これはプラザ合意前の水準である。
円は世界でどの程度使われているのであろうか。
BISによれば、世界の1日あたりの外国為替取引量は3兆2100億ドル。このうち最も多い取引がドル・ユーロで、全体の27%を占めている。次に多いのがドル・円で13%、以下、ドル・ポンドの12%・・・と続く。01年の調査では、ドル・円は20%04年は17%だったことを考えると取引量が少しずつ減っているのがわかる。ちなみに、07年でのユーロ・円の取引は2%にすぎず、それ以外の通貨と円の取引については、データすらない。また、通貨ごとの取引量を比べるとドルが86.3%(04年は88.7%)と圧倒的に多く、次いで、ユーロの37.0%(同36.9%)第3位が円で16.5%(同20.2%)だ。こうしてみると、基軸通貨とせいのドルはいまだ健在で、他方ユーロも力をもちつつある。しかし、円はといえば、いまやローカルな通貨としてドルに依存しているにすぎない。
今後のもうひとつの不安は中国・元の台頭というシナリオである。
円はアジアの中でもっとも信頼されている通貨であるが、近い将来、中国のGDPは日本を追い抜き、世界第2位になることが確実視されおり、人口や成長率で優る人民元の地位が向上し、相対的に円のプレゼンスが落ちるだろうと懸念されている。
日本として円のプレゼンス向上には経済基盤の再構築により日本経済の建て直しを図るのが急務というわけである。

日本の経済力の実体
2008/03/17
2007年末の内閣府の発表によると、世界全体の名目GDPに占める日本の割合は、24年ぶりに10%を割った。また豊かさの指標といわれる1人あたりGDPをOECD諸国で比較すると日本は18位(’06年)でトップのルクセンブルグや2位のノルウエーの半分に満たない。1993年には1位だったことを考えれば驚くほどの凋落である。
経済の供給力の伸びを示す潜在成長率は、米国が2.5〜3.0%、中国は8〜9%といわれており、日本は1.5%程度と頼りない。GDP総体では世界第2位でも成長率の低迷が続いているため、1人当りGDPでは大きく順位を下げることになったのである。
他の先進国に先駆けて進行する少子化=労働力の減少をカバーするだけの生産性向上が図らなければ、GDPは米国からますます引き離され、中国に追い抜かれるのは火を見るより明らかだ。
株価の動向がこの低成長を如実に反映している。
日本株は昨年12月時点で年初から6.55%下落し、調査対象の52カ国中で51位だった。サブプライムローン問題の震源地である米国でさえプラス4.02%で43位、中国はプラス66.91%で6位だ。
巷間いわれているとおり、日本株だけが世界で1人負けしているといってよい。
その理由ははっきりしている。株式市場の売買代金の6割以上を占める外国人投資家が日本株離れを起こしているためだ。
’07年の外国人投資家による年間買い越し額は、約4兆1500億円。これは前年の約半分でしかない。特に昨年後半からは売り越しが目立ち、今年1月にはこれまで最大となる約1兆4500億円の売りこし額を記録した。世界的に信用不安が広がるなか、低成長で魅力なしと判断された日本株が真っ先に売り込まれたのは明白であった。
実は、日本経済はもっと根本的な問題を抱えている。
対内直接投資、つまり海外からの「腰を据えた買い」が極端に少ないのである。
対内直接投資とは、主に外国企業が国内企業の発行済み株式総数の10%以上を取得することを目指す。株の売却や配当益を狙うのではなく、その企業への経営参画または買収を目的とする投資だ。
例えば、シンガポールではこの数年の対内直接投資の対GDP比がずっと150%を超えている。アジアの少国をこの地位に押し上げたのは、ひとえに膨大な外国資本であるといっても過言ではない。
英国では47.8%、ドイツで17.4%、米国でも13.5%であるが、日本ではわずかに2.5%であり、まさに「ジャパン・パッシング(無視)」がおきているといえる。
エネルギーと食料のおおくを海外に依存している日本は、その原資を今後も国内だけでまかない続けるのは不可能だ。一段の規制緩和と市場開放によって外資を呼び込む以外に日本ば生き残る道はありそうにない。

米モノラインの経営改革
2008/03/12
モノライン各社が金融市場の動揺の連鎖を防ぐべく経営改革に乗り出し始めた。
モノライン最大手のMBIAはCDO等の再・証券化商品から完全撤退し、リスク管理強化のため、証券化商品、地方債など保証対象ごとの分社化の検討を始めた。保証対象ごとの分社化を検討するのは高リスクの証券化商品で今回のような値崩れが起こった場合にも地方債など他の商品にも影響が及ばないようにするのが狙い。
アムバック・フィナンシャル・グループも証券化商品の新規保証を一時停止している。
大手のアムバックが格下げ回避を狙って15億ドルの公募増資を実施し、メザニCDO等の値下がり回避を狙った。また、アシュアード・ギャランティも米著名投資家ウイルバー・ロス氏からの支援で最大10億ドルの増資で合意した。MBIAも既に26億ドルの資本増強を完了済みである。
このように、モノライン各社の経営努力により「モノライン危機」は最悪期を脱したように見受けられる。

ちぐはぐな金融庁
2008/03/08
3月4日の日本経済新聞の19面の「大機小機」の欄に「ちぐはぐな金融庁」というタイトルで解説がしてあった。この解説には大賛成だったので、この解説を是非ご覧いただきたいがちょっとまとめてみるとざっと下記のようなものであった。
昨年の9月に施行された金融商品取引法が「まるで金融商品取引禁止法」という陰口も聞かれるほどの悪評があったので、金融庁が2月下旬に「金融商品取引法の疑問に答えます」という文書を公表したとのこと。
「高齢者にリスクの高い商品を売ったり勧誘したりしてはいけないことになったと聞くが本当か」
「取引のつど顧客の財産の状況を把握しなければ一切の取引ができなくなったと聞くが本当か」
「投資経験が豊富な顧客にも長時間の事前説明をしないと売れないと聞くが本当か」
等々、どれも窓口で実際に目にする光景である。こういう事態になったのは金融機関の理解不足だけが原因ではない。「金融処分庁」と言われるほど銀行などの金融機関に厳しい姿勢で臨んできたこれまでの金融庁のありかたも少なからず影響しているといわざるを得ない。後でどんな処分をされるかわからないから過剰ともいえる反応を毎期起こしたのだ。
その金融庁が、多額の不良債権を抱えた新銀行東京の問題を傍観している。これはどうしたことか。
金融庁に銀行経営に介入する強い権限が与えられているのは、預金者保護に万全を期し金融システムが動揺しないようにするためだ。もちろん、自治体出資銀行は自治体から資本のバックアップを期待できる点で民間銀行とは違う。しかし、新銀行東京の資本増強は東京都議会の反対で難航している。
4000億円もの預金を預かる銀行の経営問題を金融庁が検査にも入らず放っておいていいはずはない。今の金融庁は何かちぐはぐだ。平時の金融行政、あるいは官民の関係がいかにあるべきかをまだ描けずにいるからだろう。
以上のような解説記事であるが、簡単にいえば、金融庁の体質は江戸時代のお上体質そのものであり、弱い者には強く、強い者には弱腰であるような行政的基本体質を感じざるを得ない。
新銀行東京には自民党時代に今を我が世の春としている清和会に属していた石原都知事が絡んでいる新銀行東京には行政の手をつけないで、金融庁に弱い立場の銀行・証券には強く処するというのが
この典型であると思う。

金融商品取引法改正案
2008/03/07
政府は、4日、世界の中での東京市場の競争力強化を掲げた金融商品取引法改正案を閣議決定した。今回の改正案は「市場の国際化・活性化」に軸足を置いているのが特徴である。
目玉の一つはプロ投資家向け専門市場の創設だ。
機関投資家のハイリスク・ハイリターン取引とか国内外の企業への資金調達手段の場の提供等を目指している。東証は「日本の成長企業に加え、アジアの新興企業を呼び込む」と意気込む。上場投資信託(ETF)の品揃えも大幅に増える。ETFの投資先は株や債券など有価証券に限られていたが、改正案はこれを原油や穀物などの商品にも広げた。
目玉のもう一つは、金融機関に対する規制を欧米並みに近づけることで、国際競争力の強化を後押しすることである。銀行・証券・保険等間のファイアウオール規制を緩和し欧米金融機関大手のようなグループ一体型の経営に道を開き、また、欧米の金融列強が力を入れる排出権取引やイスラム金融、商品デリバティブなどにも本格参入できるようにするものである。
市場関係者の間では概ね歓迎する声が多いが、行政当局の規制・関与を本当に薄めることができるものとして実施されるようになることを切に期待するものである。

サウジ通貨、ドル連動維持
2008/03/06
サウジアラビア通貨庁のアルサリーヤ総裁が3日に、サウジ通過のリヤルのドル連動(ペッグ)を維持・継続を表明した。ドル・ペッグを維持せず、離反するのではと巷間噂され懸念されていたこともあり、マーケットには評価する声が多い。
マーケットではペルシャ湾岸諸国がインフレ対策のため、通貨のペッグ先をドルからユーロ、円を含めた主要通貨によるバスケットに変更する可能性もささやかれていたりもするが、このドル・ペッグ維持の表明は、政治的にも経済的にも深い関係を有する両国関係で、サウジアラビアがドル急落を避けたい米国への配慮と、同庁の有する2000億ドル以上といわれる米国債の資産がドル安で目減りするリスクを回避したものと受け止められている。
同時にサウジ通貨リヤル相場の切り上げも控えると言明したのも評価されドル急落の懸念は遠のいたとの安心感をマーケットに与えた。
また、同総裁はサウジアラビアの新たなSWFについては、財務省が準備し、当初の資産規模は60億ドル(約6200億円)前後になるとの見通しを示し「ビジネスとして有益ならば海外にも投資先を拡げるだろう」とし、新ファンドが日米欧の金融機関や企業に投資する可能性を示唆した。
これらの表明は世界のマーケットへ少なからず安心感を与えたものと理解できると思っている。

ヘッジファンド投資拡大へ
2008/03/05
資産13兆円の国内最大の民間年金基金である企業年金連合会は、ヘッジファンドへの投資を始めたた。FOF(ファンド・オブ・ファンズ)への投資である。投資額はまず運用資産の約0.4%の500億円程度とし、将来は1000億円以上に増やす見通しとのこと。
サブプライムローン問題で金融市場の混乱が続くなか、運用益の確保を目指した投資先の多様化が企業年金の間で広がってきた。
一部の企業年金は既にヘッジファンド投資に取り組んでいる。
例えば、旭硝子の企業年金は運用資産の34%、三菱商事は30%、富士電機は20%等などである。
これら傾向は中小企業にも広がりを見せてきており、企業年金連合会の調査では企業年金の半分強がヘッジファンド投資を始めている。資産に占める比率は平均で0.4%、2004年〜2006年の平均利回りは年5.4%であった。
これら傾向はさらに拡大すると思えるが、ヘッジファンドの多くはデリバティブを活用して投資家からの資金を大きく上回る規模の取引をしており、運用に失敗すれば巨額の損失のリスクは当然あるので、その点のリスクヘッジが今後の一方の大きな課題でもあろう。

原因はいずこに、日本の経済地位低下
2008/03/04
2006年の名目国内総生産は4兆3千7百55億ドル(約470兆円)で、世界のGDPに占める割合が9.1%となり24年ぶりに一桁に落ち込んだ。また、一人当たりのGDPも経済協力開発機構(OECD)加盟国30国中18位で、日本の経済地位低下が鮮明となり、政府に動揺が生じている。
日本は一人当たりのGDPで1993年にはルクセンブルグに次いで2位となり、90年代から2000年代初頭まではほぼ上位5位以内を占めてきた。ところが04年には12位、05年には15位となり、06年にはついに下位グループになってしまった。
内閣府は、「名目成長率の伸び悩みのほか、為替が円安水準だったことが大きい」と説明しているが、中国などの新興国が急成長しているのを傍目に日本の努力不足は否めない。
ランキングの下降は小泉政権時代が発端だけに、米国流の経済構造を目指したショック療法ともいうべき構造改革が、経済の足腰を弱くしたとみることもできる。これに対し、当時の経済運営を主導した竹中平蔵元経済財政担当相は、今や構造改革が後退していることが日本経済の没落を招いていると反論している。
私は前者の見方に与しますが、皆さんはいかがですか?

米国へ押し寄せる「SWF」(ハゲタカか救世主か)
2008/03/03
不況が間近に見え隠れする米国市場に国外からの投資マネーが増大している。
原油価格の高騰と主要通貨に対してほぼ全面的なドル安が続く中、米国に再び世界のカネが集まり始めている。金融関係者ならずとも米国経済の瓦解の憂慮は深刻であり、サブプライムローンに端を発する金融危機が信用不安を加速させている最中に、資金流入が増える現象に首を傾げる向きもある。
実は昨年の米国への直接投資額は2006年比で約90%増の4140億ドルに達して、ポートフォリオ投資を含めた米国への投資額は2兆ドルを超え、その一大勢力が「SWF」である。
米国からすれば、昨年からの不安定な金融市場において、SWFほど安定した資金供給元はない。
だが、SWFは米国内からの反発も受けている。
民主党のエバン・バイ上院議員は「SWFは本質的に一般の民間投資とは異質のものだ。政府が管理するファンドである以上、利益追求以外に国益がからむ可能性がある」と警戒心を解かない。
一方、ヘンリー・ポールソン財務長官は、1月23日に、SWFについて「国外からの投資は米国経済の力強さと維持するうえで重要な役割を担っている。これは彼らが米国経済にどれだけ期待しているかのシグナル」と肯定的な見解を示した。さらに、ローレンス・サマーズ元財務長官も「過去数カ月のSWFの取引で批判の対象になることはほとんどない」とまで言った。
彼らの資金は今後も米国市場に怒涛のように流入するとみられる。
昨年の米国直接投資額のトップは隣国カナダの650億ドルで、2位以下にはイギリス、オーストラリアと先進国が続くが、6位にはアラブ首長国連邦が入る。7位にはサウジアラビア、12位に韓国、中国は14位にランクされている。かつては米国への直接投資でアジアのトップだった日本は15位内にない。
日本政府はSWFをまだ公式にスタートさせておらず、米国への投資では途上国の後塵を拝したままである。

揺れる日銀の金融政策
2008/03/02
世界の金融市場を大混乱に陥れているサブプライムローン問題だが、金融政策に行き詰った日銀で、悪夢のようなゼロ金利への回帰観測が台頭してきているようだ。
どうやら日銀内部でも利下げのオプションが真剣に検討され始めた模様だが、下げる場合は通常想定される0.25%幅ではなく、一気に0.5%の引き下げ、つまりゼロ金利へ再び逆戻りする案が有力だという。
事情に詳しい日銀幹部は「それぐらいやらなければ景気を刺激する効果はない。一度ゼロ金利に戻れば、効果を見定めるまで当面続けることになるだろう」と解説する。
市場では内外の金融機関の1〜3月期決算が出そろう春以降に「景気の最も深い谷が来る」(エコノミスト)との声が強い。次の日銀トップの初仕事が利下げという事態もありえそうだ。
しかし利下げに踏み切れば、日銀が目指す金利正常化も道は遥か彼方に遠のくことになり、日銀内部でも「最後の手段とすべき」tの慎重論はある。
いずれにしても景気の見通しが良くないことの証左であると思う。



















