金融業界Blog

基軸通貨ドルの「地位」は揺るがない

2008/04/07

ドル急落でドルの威信が揺らぎつつあると危惧する専門家が増えてきているがどうだろうか。

変動相場制に移行した1973年から現在までを均すとドルは円に対して名目で年率3%くらいずつ下落しており、ドル安は今後も徐々に進むだろう。ただし今回のドル安はグローバルな不均衡の調整という意味合いが強い。これと基軸通貨としてのドルの没落とは別問題である。ドルが基軸通貨の地位を失うことは今後の20〜30年は考えられない。何故なら、ドルは対外債務が増えて為替相場が下落しても信用危機を起こさない唯一の通貨といえるからである。

米国に入るマネーの9割はドル建てだが対外資産におけるドル建て比率は実は半分である。残りはユーロや円などの外貨建てであるため、ドルが全般的に下落すると膨大な為替益が米国にもたらされるので。しかも、ドルの下落は米国の経常赤字を縮小させるというメリットもあり、すでに米国の経常赤字はドル安に伴って縮小局面に入っている。2006年に対GDP比で6.1%にまで上昇した赤字は07年には5.3%に減少している。足元で続くドルの下落がこれからも続くと、今年の赤字はGDP比4%台後半に、また2010年ごろには3%台程度に減る見通しである。

さらに米国は対外債務コストが債権のリターンより割安という体質を持っている。06年の米国では債務が債権より2.5兆ドル多いのだが、13.8兆ドルの対外債権から得るリターンが16.3兆ドルの債務が生むコストよりも大きい。米国の対外投資は1970年代から活発化したのに対して、日本や欧州の対米投資が本格化したのは80年代以降と新しい。通常、投資が黒字化するには時間がかかるため、履歴が古い分だけ相対的に米国のほうが高いリターンを得られる。だから経常赤字にもかかわらず、債務と債権の差が縮まり、収支がプラスになるという減少が起きるのである。

こういう米国の姿は基軸通貨を武器に他国から搾取を続ける「金融帝国」とも表現できる。しかし日本及び他国が米国への投資を政治的・軍事的に強要されているわけではない。また、米国市場は世界最大の規模を持ちながら、資金の出入りが自由で企業の情報開示が進んでおり法制も整備されている。肥大化するマネーの投資先としての好条件がそろっているから米国への投資は衰えない。
日本は昨年夏以降対米投資をためらっているが、世界的に見れば、対米投資は昨年秋から増加基調にある。

国際通貨基金の調査によると、外貨準備高に占めるユーロの割合は現在25%程度。これに対してドルは60数%である。流通の実態を見てもユーロはまだEU内の地域通貨の性格が強い。今後、決済通貨としてのユーロの使用が増えていくは間違いないだろうが、ドルにとって代わるという異変は、あるとしてもはるか先のことであろう。

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