金融業界Blog

外国ファンドの「日本買い」始まる

2008/05/02

米、英の金融当局はサブプライムローン危機を収束させるために、なりふり構わない政策を打ち出し始めた。つまり、かつて日本が最終兵器として投入したものの諸外国からtoo little,too late(少なすぎる、遅すぎる)と言われた公的資金の投入を早期かつ大規模に行っている。

米国では、JPモルガンがベア・スターンズを買収する資金をFRBが290億ドル(約3兆円)の特別融資という形で供給して、事実上公的資金による買い支えを行った。これに続きヨーロッパでは、イングランド銀行が金融機関が転売できずに抱えて流動性危機に陥っているサブプライムローン関連の金融商品と、英国債を交換するスキームを発表した。まずは10兆円規模を予定と発表しているが、必要に応じて増額も見込まれており、これも事実上の公的資金の投入である。
とはいえ、世界金融危機はまだ予断を許さず、日本の景気低迷はもはや避けられない。日本の2月の景気動向一致指数は50%を超えたが、鉱工業生産指数の基準改定に伴う数値のブレによるところが大きく、実態としては景気後退の目安となる「3ヶ月連続の50%以下」のリスクはまだ十分に残っているといっていいだろう。
日銀も景気判断を下方修正し、「必要なら利下げも検討すべき」と発言して委員がいたことを強調してメディアに流していることからじょじょに利下げの地ならしが始まったとみていいだろう。
金融危機と景気後退を何とか金融緩和で乗り切ろうとしている経済環境は、逆に見れば買収ファンドにとっては絶好のビジネスチャンスであり、水面下でかなりアクティブに活動しているようだ。
では日本の企業は投資先として本当に魅力的なのだろうか。
ある業界関係者は「1990年代後半の経済危機の時に不動産投資で大もうけしたGS,モルスタ、ローンスター、サーベラスといったプレーヤーは、今度は企業買収で同じシナリオを描いているようだ。当時、日本の不動産を買いあさるのは一般の日本人には理解不能だった」という。
事実、弊社にもこれらからそれに相当する求人が来ているという事実もある。

ある外資系投資銀行担当者によれば、「日本のPERが20倍を切っているということは、益利回りが5%以上。不動産投資は過当競争で、大規模案件では3%でも御の字の昨今を思えば、パラダイスだ。一方、金融機関のLBOローンの予算は既に年初に強気に立てられており、今後も調達金利は低め誘導と読んでいいだろう。調達金利と利回りにこれほど差があることはめずらしい。単純に金融商品としてみれば、たとえばヨーロッパの不動産、新興国株式と比べてもはるかに割安感がある。全世界的にも、強気を維持している数少ない領域だ」という。

具体的にはどの産業を狙っているのか。
ある投資銀行関係者は、「ここ2,3年、大手のファンドは大企業の部門買収や子会社の買収を狙って活動をしてきたが、結局あまり案件をまとめることができなかった。次に狙ったのがオーナー経営者の引退案件だが、経営に固執しがちな日本のオーナー経営者がわざわざ売る会社は、何らかの隠れた問題を抱えていることが多く、”スカ”をつかんでしまうことも多い。近いところでは三洋電機しかり、某アパレル会社しかり、某外食産業しかり、どれも大失敗案件になりそうな気配だ。そこで現在は、株主が分散していてTOBで買うことができる会社、経済のサイクル、特に円高で一時的に経営危機に陥りそうな業界の研究をしているようだ」という。
また、「無理な成長を維持するため中途半端な会社を高値で引き取ってくれるイオンやIT企業のような会社が総崩れになってしまったので、買収したあとの転売先イメージが変わってきている。現在イメージされているのは中国、インドの新興企業。彼らが欲しがりそうなブランド、顧客、技術を持っている渋めの中堅企業をターゲティングしているようだ」とのこと。
別の証券会社関係者は、「産業用機械、自動車部品、地方銀行、ノンバンク、食品、鉄、製薬会社といったところがわかりやすいターゲットだろう。実際、こうした業界の株は大きく下げると誰かが拾っているのか、下げ止まる。そうしたファンドがいずれ買いあさることを見越して、ゆっくりと買い進めているヘッジファンドもあるようだ」という。

とはいえ、マスコミ、世間の風評的には、「少子高齢化、政治の混乱による官製不況、円安バブルの崩壊、原料高、個人消費の低迷」と日本経済にはまったく明るい材料が見えてこない。投資ファンドの強気はどんなシナリオに基づいているのだろうか。ある外資系ファンドの関係者は「そう遠くない将来、転換点がくると思います。日本は基本的な技術や現場レベルの人材の質は高くてまだまだ世界で戦えると思います。日本の国内市場が伸びなくても、海外の新興市場の中でまだまだ成長余地はあると思います。ただ経営者、リーダー層のレベルが低いだけです。ローマの諺ではないですが、「ライオンの群れを羊が率いている」状態です。われわれ主導で経営層と戦略を変えれば、大化けする会社はいくらでもあると思います。かつてメーンバンク制度や霞が関が担っていた産業の構造転換を今回はわれわれが仕掛けるのです。」
実際、投資ファンドはメガバンクの常務や旧通産省の審議官といった人材を集め初めているし、こうした構想もまったくの妄想ではないことが見てとれる。彼らは証券市場は国民が不安の底にあるときこそ、獲物を虎視眈々と探している。

そして、彼らが実際に戦略を行動に移すタイミングが刻一刻と迫っているのである。

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