金融業界Blog

サウジ、石油増産の本気度

2008/06/18

世界最大の石油輸出国サウジアラビアは、世界の人々と同じくらい石油高騰にショックを受けている。1バレル=14ドルの原油安で国が財政危機に陥りかけたのは、ほんの10年前のこと。以来、国庫はあふれ返ったが、今は130ドルの原油高が消費国経済に与える悪影響と代替燃料に商機を与えてしまう事態を懸念しているのだ。
 石油相場を冷ましたいサウジは新規油田の開発に大金を投じている。6月には産油量を30万バレル増やし、日量945万バレルにする。この決断はブッシュ米大統領の増産要請に応えるというより顧客の注文に応じるものだ(アブドラ国王率いるサウジは、ブッシュ大統領は死に体で、米国によるイラク侵攻は大失敗だったと考えている)。また、サウジは心理的な効果も狙って、顧客に必要なだけの石油を供給すると確約している。
 これで多少の効果はあっても、目先、相場を抑えるには限界があるとサウジは見ている。同国は日量200万バレルを予備生産能力として抱えるが、これは緊急事態(米国によるイラン攻撃など)に備えて市場に出すべきでないと考えている。
 加えて、石油コンサルティング会社PFCエナジーのデービッド・キルシュ氏ら一部専門家の見立てでは、巨額の投資資金が商品相場に流れ込んでいる今、サウジとしては短期的な価格変動はコントロールできないという計算が働く。サウジは、最近の相場高騰の原因は投機と供給不足に対する不安感にあると見ている。いずれもサウジの手に負えない要因だ。
 実際、市場には石油が十分あるという。イランは最近、売れない石油約3000万バレルを浮体式の貯蔵設備に収めた。「もし増産したら買い手が見つからないだろう。石油価格には影響しない」とあるサウジ関係者は言う。
もっとも、長期的には事情が異なり、相場が下がる可能性がある。将来の石油供給を巡る不安は、サウジには当てはまらないかもしれない。同国は野心的な増産計画に乗り出しており、来年半ばまでに新たに日量200万バレル以上の増産が可能になる。新規油田の1つ、クライスの生産能力は日量120万バレルで、それだけで来年の世界需要の増加分を上回る。
 国営石油会社サウジアラムコで油層管理責任者を務めたナンセン・サレリ氏によると、サウジの石油生産能力(現在は日量1140万バレル)は1250万バレル、あるいは1500万バレルまで高められる。今は米国で新興企業を経営するサレリ氏曰く、「サウジには資源基盤があるからだ」。
 PFCエナジーのキルシュ氏は、それだけの増産能力を持つという事実だけで、「実際に生産に向けられようが予備能力のままであろうが、相場を押し下げる要因になる」と言う。米リーマン・ブラザーズの石油アナリスト、エドワード・モース氏は、今年暮れにかけて石油相場は大幅な調整期を迎えると見る。需要が鈍り、サウジの増産が本気だということに市場が気づくからだ。モース氏は、2009年の平均石油価格を1バレル=83ドルと予想している。
 サウジとしては、原油が1バレル=60ドルまで下がっても採算が合う。問題は、サウジが石油輸出国機構(OPEC)を説得し、それだけの原油安を受け入れさせられるかどうか、だ。


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