金融業界Blog

どこまで続く米国発信用不安

2008/07/17

2008年7月第2週に米金融市場で起こった事は、近年まれに見る過激な展開だった。まず、米地方銀行で住宅ローン大手のインディマック・バンコープが破綻した。破綻行としては、過去最大に近い規模である。

 そしてもっと重要なのが、住宅価格のさらなる下落により、米政府支援機関(GSE)と呼ばれる住宅金融会社、米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の2社の流動性不安が頂点に達したため、米財務省とFRB(米連邦準備理事会)がかなり思い切った対策に踏み切ったことだ。
 現時点で言える確かなことは1つしかない。もしこの2つのGSEが破綻すれば、もはや政府に打つ手はなく、米国経済は崩壊する、ということである。
 最初に断っておきたいが、インディマックの破綻は今回のGSE危機の直接の原因ではない。銀行の破綻はインディマックで今年5行目であり、その株価の急落(1年で25ドルから0ドル近くに下落)ぶりを見ても、早晩破綻することは大方予想がついていた。
 ご承知の通り米国では、銀行預金の10万ドルまでは保証されており、その額を超える預金も、銀行が適正価格で投資家に売却された場合は預金者の手元に戻ることになっている。この制度のおかげで、これまでは銀行が破綻しても金融システムがパニックに陥ることはなく、取りつけ騒ぎも起こらなかった。
 銀行破綻が今後拡大すれば、間違いなく重大な問題となるだろうが、今のところ破綻の数は、1990〜92年の840件に比べればごくわずかである。
 しかし、今回起こった2つのGSEの経営不安は、全く話が違う。GSEは、国民の住宅保有を促進する目的で米議会が設立した。この目的の実現については非常によくやってきたし、むしろやり過ぎだったかもしれない。
 両GSEは金融機関から住宅ローン債権を買い取り、2社が保証する証券化商品として売却する。こうした保証は住宅ローン担保証券を売却するうえで義務づけられているわけではないが、投資家には非常に人気があった。
 保証のおかげで銀行は何十年もの間、住宅ローン融資が実行しやすかったし、逆に債権を金融市場に売却して得た資金で、また新しいローンを提供できた。結果、全米の住宅保有率は68%以上と、家計貯蓄率がゼロでかつ貧富の差が激しいお国柄にしては、驚異的な実績を誇った。
 だが、その無理がたたり、GSEのバランスシートは、もはや制御不能な状況に陥っている。現在、ファニーメイが保有・保証する住宅ローン債権は約3兆ドル、フレディマックは2兆2000億ドルに上る。全米の住宅ローン残高の実に約46%をこの2社が抱えていることになるのだ。
今のところ、住宅ローン債権のデフォルト率は非常に小さいため、GSE2社の負担はさほど重くはない。だが今後、2社のポートフォリオのわずか2%が焦げつくだけで、1000億ドル以上の資金が必要になる。今年3月末時点で2社合わせても資本は810億ドルしかないのに、最近の株式相場ではさらに資金が必要になっても株売却が難しい。
 かつてならまるで考えられないことだが、今や両公社の倒産までも現実の可能性として受け止められている状況である。こうした不安から、2社の株価はここ数カ月低迷し、11日にパニックが頂点に達したというわけだ(両社ともに昨年から85%以上下落した)。
 政府が週末にもかかわらず行動を起こさざるを得なかったのは、そのためである。政府による救済策は以下の通りだ。まず2つのGSEは、FRBから公定歩合で資金を借り入れできる。一方、財務省は両社への融資枠拡大を議会に求めると発表した。
 財務省はまた、必要な場合のみ実施する両公社の株式買い取り権限を、議会に求めると見られる。議会も住宅市場対策をまとめている最中で、初めて住宅を売却した者への減税などにより住宅価格下落に歯止めをかけ、差し押さえ回避を図ろうとしている。

 それにしても、今後は一体どうなるのか? 
 米国ではまだ景気後退(リセッション)は起きていない。こんな状況なのに信じ難いかもしれないが、GDP(国内総生産)はいまだ縮小せず、失業率も好況時からわずか1%上がっている程度である。
 だが両公社が破綻すれば、間違いなく大惨事を引き起こす。政府は当面、両公社の債務不履行を受け入れられないし、絶対にさせないに違いない。両公社が債務不履行に陥れば、住宅市場は完全に崩壊し、劇的な景気後退につながるからだ。景気後退を避けるため、政府は「インフレやむなし路線」で、住宅市場への資金投入を選んでいるようである。
 しかし、インフレを促進するだけでGSEが救済できるわけではない。2社の損失がポートフォリオの5%に達すれば、追加で投入が必要な資金は何と2500億ドルという気が遠くなるような額になる。万が一そのような事態になればインフレは制御できなくなり、ドルは急落、ファニーメイとフレディマックは政府の介入もむなしく、金融システムにもはや不要なお飾りに過ぎなくなる。
 政府がそこにタイミング良く資金供給できるとは到底思えないからだ。非常事態が現実のものとなれば、政府が必要な支援に着手する頃には、住宅ローン市場と住宅価格は崩壊している。政府はGSEの債務不履行を回避することはできても、米国経済を救うことはできないかもしれない。

もはやそうならないよう願うばかりだ。


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