金融業界Blog

厳しい世界経済見通し

2008/09/02

今や、世界経済は、これまで健闘してきた日本やユーロ圏経済がついにマイナス成長になり
8月半ばには、主要先進国の景気悪化が一気に表面化し、新興国にも陰りが出て世界経済が深刻な景気後退に陥るとの声も上がってきている。

 8月第3週は衝撃的な1週間となった。主要先進国で悪材料が相次ぎ噴出、どの国も欧米の信用危機の影響を避けられないことが露呈したからだ。それどころか今、すべての国が景気後退の瀬戸際にあり、様々なリスクが顕在化しつつある。

 最初の悪材料は8月11日に発表された米連邦準備理事会(FRB)の調査報告書だった。融資責任者を対象とした同調査によれば、企業及び個人向けのあらゆる融資分野で米国の金融機関が融資基準を厳格化していることが分かった。借り手側の資金需要も弱く、米経済の先行きに影を落としている。
 英国でも悪いニュースが続いた。英産業連盟 (CBI)のリチャード・ランバート会長は「CBIは過去1年、経済見通しを楽観しすぎてきた」と認めた。13日にはイングランド銀行(中央銀行)のマービン・キング総裁が英国の物価上昇率は数カ月内に5%を超える見通しだと発言。「1四半期、あるいは2四半期続けてマイナス成長に陥る危険性がある」と述べた。

 問題は米英に限った話ではない。日本では第2四半期のGDP(国内総生産)が前期比0.6%減となり、過去7年間で最悪のマイナス成長となった。14日に発表されたユーロ圏のGDPは0.2%減で、1999年の通貨統合以来、初のマイナス成長に陥った。成長率が0.1%まで鈍化したスペインでは閣僚が夏休みを切り上げ、緊急閣議で景気刺激策をまとめた。
 週後半になると、人々の関心が再び米国に向かった。7月の消費者物価指数が前年比5.6%上昇という91年以来最悪のインフレとなったからだ。
 米国の問題が他国に波及すると予想していた大手投資銀行HSBCは、「意外だったのは悪材料そのものではなく、タイミングだった」と言う。7月まで何もなかったのに、8月に入ってすべてが一気に表面化したことが衝撃であった。

つい最近まで欧州の経済大国と日本は健闘していたのに、今やすべての先進国でインフレが高まり、景気後退の瀬戸際に追い詰められている。最大の懸念は、景気後退が弱った金融システムに打撃を与え、融資基準の厳格化が景気を一段と悪化させる負の連鎖だ。
 多くの人にとって明白なのは「米国がくしゃみをすれば他国が風邪を引く」という古い至言の正しさだ。一時騒がれたデカップリング(非連動)理論は誤りだったことがはっきりした。

 金融危機、信用収縮、住宅バブルの崩壊、株式相場の下落、原油その他のコモディティーのコスト負担、米国との貿易関係、ユーロ高といった要因に、インフレを恐れて身動きを取れない当局の事情が重なり、米国だけでなく世界経済全体が深刻で長い景気後退に陥る懸念が強まっている。
 さらに、先進諸国の惨状はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の活況にも終止符を打つという。中国などの新興アジア諸国はG7向けの輸出減少に見舞われ、インドなどの貿易赤字国では資金流入が激減、資源輸出国はコモディティー相場の急落に打撃を受けるからだ。実際、インドの経済諮問会議は先に、同国の経済成長率が昨年の9%から今年は7.7%に鈍化するとの見通しを発表した。
 だが、景気悪化をもたらしている様々な要因の比重が国によって異なるという重要な事実を見落としてはならない。

 まず、一部の国の一見悲惨な第2四半期のGDP統計は極めて強い第1四半期からの調整と見た方がいい。ドイツでは第1四半期にGDPが1.3%伸びた後、第2四半期に0.5%のマイナス成長となったが、1年前と比べればGDPは1.7%拡大している。欧州最大の経済大国にしては悪くない数字だ。同じことは日本についても言える。第2四半期は前期比で0.6%のマイナス成長だったが、成長率を前年同期比で見ると、第1四半期の1.2%が第2四半期には1.0%へとやや鈍化したにすぎない。

 先行きを楽観する2つ目の理由は、経済大国の間でも景気低迷の原因が異なるという点だ。コモディティー相場高騰は世界中の家計に打撃を与えたが、信用収縮と資産価格の急落、消費者債務の拡大が響いているのは、米国、アイルランド、スペイン、英国など、住宅市場が過熱していた国だけだ。
最も重要なのは、コモディティーブームに反転の兆しが見られることだろう。8月半ば、黒海向けパイプラインを擁するグルジアで戦争が勃発しても、原油相場の下落に歯止めはかからなかった。米JPモルガンは、コモディティー価格の下落が景気後退のクッションになると見る。原油が1バレル=145ドルだったらユーロ圏は景気後退入りだが、115ドルなら景気低迷で済むtの見通しを述べている。

 コモディティー市場の変化は、近代の世界経済がある種の自動安定化機能を備えていることを示している。需要が増え続け、供給が伸びないうちは価格が急騰したが、8月半ばに石油と農産物の需給に関する好材料が出ると、相場は急落した。
 そして何よりデカップリング理論は、一部の欧州諸国と日本が米国の特定の問題の影響をさほど受けずに済むという意味ではまだ有効だ。そもそもこの理論は、すべての国が原材料の高騰といった世界的な現象と連動せずに済むという話ではなかったのだ。
 しかし、危険はあらゆるところに潜んでおり、先進諸国は重大な岐路に立たされている。ある調査によると、欧州の企業は今の問題に対する最善の答えは節約だと考えている。一方、米国は所得税還付の効果が切れる年末の情勢を不安視している。今後、米国、英国、スペイン、アイルランドが厳しい時期を迎えるのはまず間違いない。

 直近の最高値から20%以上下がった原油急落は世界的なインフレ、景気悪化懸念を和らげるものの、家計や企業がインフレを当然のことと考え、賃上げスパイラルが起きる可能性は残る。仮にそうならなくても、執拗なインフレの脅威のせいで各国中央銀行は刺激策を取るのに二の足を踏むだろう。
 つまり今のところ、世界の政策は様子見しかない。実際、コモディティー高騰と金融危機という二重のショックは今後1年で和らぎ、世界経済は新たな均衡点を見いだすかもしれない。以前ほど活気がなくても悪くはない状況だ。

 十分あり得るシナリオではある。だが、この1年間の乱高下を見る限り、その実現性は高くない。先進諸国の今後の展望は一部の真っ暗な予測より明るいかもしれないが、それでも先行きは厳しい状況であると言える。

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