金融業界Blog

今の投資銀行はもはやなくなる?

2008/09/18

今年に入りベアー・スターンズとリーマン・ブラザーズが破綻し、メリルリンチが破綻寸前ギリギリセーフでバンク・オブ・アメリカ(BOA)に吸収合併された。

 米国の独立系大手投資銀行で残るのは、とうとうゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーの2つになってしまった。と言っても、モルガン・スタンレーは、いったんディーン・ウィッター・ディスカバリーに買収されている。また本日の情報ではHSBCが買収するのでゃないかというのも出てきている。米国の投資銀行に未来はあるのだろうか。

 歴史を振り返ると、かつてロンドンでは「マーチャントバンク」と呼ばれる小型の投資銀行が、その知恵とネットワークで、全盛を極めていた。SGウォーバーグ、J・ヘンリー・シュローダー、ベアリング・ブラザーズ、クライオート・ベンソンなどが栄華を極めていた。だが、英国で起きたビッグバンとともに、すべてなくなった。所謂、ウインブルドン化した。
 米国のホールセール専門の商業銀行には、かつてコンチネンタル・イリノイ、バンカーズ・トラスト、モルガン・ギャランティー・トラストがあった。コンチネンタルは破綻し、残りの2つはそれぞれドイツ銀行と、チェース・マンハッタン銀行(その元はケミカル銀行。現在はJPモルガン・チェース)に買収されてなくなった。

 こうして見ると、投資銀行とは消滅していくものであり、今後のウォール街がかつてのような姿に戻ることは決してないだろうと思える。投資銀行はなぜ、消えていく運命にはまったのか。今回のケースから言えることは、比較的単純だ。
 「リスクを取りすぎ、リスクをマネージできなかった」からである。信用リスクも取りすぎたし、資金調達リスク(アベイラビリティーリスク)も取りすぎた。それではなぜそんなにリスクを取り、またリスクをマネージできなかったのだろうか。
 他人の金をノンリコースで使える時、投資銀行家とは無限にリスクを取るものだ。なぜなら「今日の利益は僕のもの」(高いボーナスで持ち出すことができる)、一方「明日の損は君のもの」だからである。
 バランスシートが腐ろうと、資金調達が続かなくてほったらかしにしようと、それは彼にとって関係ない。リーマンを潰したファルド会長の昨年のボーナスは4000万ドル、メリルを辞めたオニール前会長の退職金は1億2000万ドルだった。会社が傾こうが、潰れようが、いったん持ち出した金を返すことはい。

 1984年、ゴールドマン・サックス証券はジェネラルパートナーが無限責任を負うパートナーシップの会社だった。このような所有形態であれば、リスク管理は、自ら完璧を期す。 2
潰れればその負債はパートナー個人にまで遡及するので、身包みはがれてしまうからである。投資銀行は、究極的にはこうした形態で運用する以外、リスクコントロールの方法は無い。外国銀行が不在地主で投資銀行を所有するなど、全く論外である。
 1999年グラス・スティーガル法が廃止され、商業銀行と投資銀行が同じ土俵で競わなければならなくなった時、ゴールドマンもそうだが、大手の投資銀行は皆株式公開し、大幅に増資し、バランスシートを大きくして資産規模の勝負に出た。リーマンは業界4番手ながら、それでも負債の総額は6130億ドルである。

 資本の30倍くらい借り入れを起こす。資本のうち、従業員の持ち分は、またその何分の一かである。従って、ほとんど全部「他人の金」で勝負でき、「収益は僕のもの、損は他人の物」という仕組みが出来上がった。これでは博打の賭け金は大きくなる一方である。金融が緩和され、過剰流動性があればなおさら拍車がかかる。最後に欲が過ぎて自爆した。ここには何の不思議もない。
 「起こるべくして起きた」ことである。ウォール街は、何かの外部要因によって破綻したのでは決してない。自らの強欲を、自分でコントロールできなくなり「自爆」したのである。
 ここ数年、「大恐慌が来る」のではと懸念してきたのだが、それは、そうしたウォール街の生きざまを見ていて、「続くわけがない」と思っていたからである
 米国の金融自由化は州際銀行法の撤廃、グラス・スティーガル法の撤廃、保険との相乗りなどが主たるものであるが、結果は惨憺たるものである。シティバンクやワコビア銀行などの経営難、投資銀行の破綻、AIGの苦境などに、その結果が表れている。
日本の金融政策も小泉内閣、竹中主導金融政策で米国式金融規制緩和に向かってきている。
米国の金融自由化はちっとも人々の幸福に繋がらず、より大きなバブルを形成してきた。
 それでは今後投資銀行はどうなるのであろうか。考えられる形態は3つだ。

 1つは昔の「マーチャントバンク」に戻ることだ。小型で知恵と人脈で生きていく銀行である。
 2番目はメリルのように、大きな商業銀行の一部となり、負債を預金保険(政府保証)付きの借り入れで賄うようにすること。
 3番目は対顧客商売をすっかりやめて、ヘッジファンドになること。
 一つの想像としては、モルガン・スタンレーは2番目の道を選び、ゴールドマンは3番目の道に進むのではないかというのが、今日のウォール街での茶飲み話である。今の形の投資銀行はもはや存在しなくなるではなかろうか。

金融、資本市場でのエポックは、第一回目が、1985年の「プラザホテル合意」で、第二回目が、1997年の東京マーケットでの山一證券、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債券銀行等破綻で、今回の第三の「サブプライムローン問題」である。
今回のエポックは、これから2〜3年は大きな再編、破綻、資本移動等が続き落ち着きどころが見えにくいが、投資銀行の今後は上述で間違いなかろうと思う。


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